笑った顔が好き。

真剣な顔も好き。

困ったような顔も好き。

怒っている時の顔も好き。ちょっと怖いけど。



「黄瀬くん、ゴメン…。わたし、もしかして黄瀬くんの見た目、好きなのかも」

「は?」

わたしは黄瀬くんとガードレールに二人並んで腰掛け、アイスを食べていた。
黄瀬くんは最後の一口を食べ終わり「やったあ、当たりッス!」と無邪気に喜んでいた、のだが。今は口をあんぐりと開けている。

あとマヌケな顔も好き、と好きなところリストに追加する。


「黄瀬くん見た目好きな人嫌いって言っていたのに、ゴメンね」

「え、えと」

「あのね、さっきね。黄瀬くんの顔好きだなあ、って思ったの」




そしたらね、


アイスが当たって喜んでる顔とか。

試合の時の真剣な顔。


笠松先輩に怒られて、しゅんとしてる時の顔。


つむじから足の爪の先まで、全部全部、


好きだなあ、って。





「…そう思っちゃった…。ゴメンね」


ペこりと頭を下げる。


嫌われ、ちゃうかな。


恐る恐る顔を上げようとすると、大きな体にわたしはすっぽりと包み込まれていた。



「黄瀬、くん?」

「もお…!どうしてそんな可愛いんッスか…!もお…!」

黄瀬くんの汗の匂いが鼻孔をくすぐる。汗の匂いなんて嫌いだけど、黄瀬くんのは、好き。


黄瀬くんはわたしの前髪を掻き分けて、額に唇を落とした。

続いて、頬っぺたにも。

チュッ、とリップノイズがわたしの耳にやけに響く。


「え、あの、黄瀬、くん」


怒られるかもしれない、と思っていたのに、まさかチューされるとは。どういうことだ一体。

戸惑うわたしに、黄瀬くんは優しく笑いかけた。


あ、その顔も、好き。



「幸っちのそういうところ、好き。大好きッス」






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