ポジション 「千歳と白石と金ちゃんって親子みたいやなあ」 謙也が何気なく言った一言。 私は雷に打たれたようにビシッと固まった。 そんな私の気持ちも知らないでみんなは同意の声を上げる。 「なんやそれ」と呆れ顔の蔵。 「だって白石って金ちゃんのオカンみたいやん。うちの子がすまんなあとか。叱っているところとかただのオカンやで。それでそれを後ろから白石を宥める千歳はただのオトンやで」 「そういやそぎゃんなこと前も誰かに言われたばい」 「もう公認やな」 ハハハハ…と爽やかな笑いが部室を満たす。 私はバシン!と手を机にたたき付け、勢いよく席を立ち上がった。 笑い声が止まり、みんなが驚いたような顔で私を見つめる。 「…とめん…」 「は?」 「蔵ァ!!」 私は蔵にビシッと指を突き付けた。良い子は真似しないでネ。 「金ちゃんのオカンポジションは私やァァァ!!」 目を三角に吊り上げ、高らかに咆哮した。 ガルルル…と犬のように唸り声を上げる。 全員の目が点になった。 私はそんなみんなにお構いなしにぎゃあぎゃあわめき立てる。 「私やって金ちゃんをしつけているし可愛がってるし!なのに、なのになのになのに!なんでみんな蔵を金ちゃんのオカン扱いするん!?私やって金ちゃんのオカン扱いされたい!」 「ちょっ、落ち着け!」 「落〜ち〜着〜け〜へん!」 謙也が私を宥めるが、私は全く落ち着けられない。蔵は苦笑いをし、千歳は「なんじゃヤキモチばい。むぞらしかー」とのほほんとしている。 その時。 「部活や部活ー!」 ドアを大きな音をたてながら金ちゃんが部室に飛び込んできた。いつものように可愛い。天使。可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い。 「金ちゃん!!」 「ほえ?」 私は金ちゃんの肩をがしっと掴んだ。 金ちゃんはキョトンとしている。可愛い×無限。 「金ちゃんにとっての部活内でのオカンポジションって、私やんな!?」 鼻息荒く、必死の形相で問いただす。きっと今の私の顔はジェイソンもびっくりな恐持てだろう。 「ちゃうでー」 しかし金ちゃんは、そんな恐持ての私に臆することなくあっさりと否定した。 私は額に手を当て、ジーザス…と小さくつぶやいた。やばい泣きそう。ガチで。 「姉ちゃんはな、」 金ちゃんはニッコリと大きな笑顔をつくった。 「ワイのお嫁さん!」 二、三秒後。 千歳を除いた私達は絶叫した。 「青春しよっとー。むぞらしかー」 TOP |