速達第二ボタン 「うっわー…」 目の前に広がる軽い地獄絵図に私は辟易していた。 蔵から第二ボタンを貰おうとする女子の群れ。もはや餌に飛びつくライオンの集まり。 「あれは…さすがに気の毒っすわ、部長」 横にいる光も私と同じ気持ちのようだ。ご愁傷様、と手を合わせる。私もそれに倣う。 「言っとくけど、多分あんたも来年ああなんで」 「え。無理っす」 「いや無理言うてもな」 これだけ綺麗な顔しとるんやもん。あと女子は悪い男子ってのに弱いねん、とは口には出さないでおく。普段私を馬鹿にしっぱなしの後輩を褒めたたえるのはなんか、癪っちゅう話…って謙也の口癖移ったうわ最悪。 「先輩」 「ん?」 どうぞ、と光が私に手を差し出す。手の平の中にはボタンの姿が。反射的に光の第二ボタンらへんに目を遣るとそこは空白だった。 「あんた三年ちゃうやろ」 「部長みたいな羽目にはなりたくないんで今先輩にやっときますわ」 おいおいおい。こいつ第二ボタンに執着なさすぎやろ。 私は額に手を当て、はあっとため息を零した。 「あんたそんなんなあ、この先好きな子とかできたらどうするんよ?第二ボタンは部活の先輩にあげたからないって言うん?」 「先輩って本間アホっすよね」 「よーし体育館裏に今すぐついて来い」 TOP |