愚民どもに告ぐ


「んーと、じゃあ次の質問!ズバリ、丸井の好きなタイプはどんな子ですか!?」

理恵はシャーペンをマイクに見立てて俺の口元につきだしてきた。キラキラと好奇心という名の輝きを瞳に宿して俺を見てくる。

理恵は新聞部所属で、立海男テニのインタビューにきた。好きなアーティストは誰だとか好きな本はなんだとか、俺は芸能人かっつーの。…と、思いつつも芸能人みたいな扱いを受けて若干舞い上がる気持ちもある。だって俺まだ中学生だもん。赤也なんか俺の数十倍舞い上がっている。隣に座る赤也も俺と同じ質問を受けていて「明るい子がいいッスね!」なんて馬鹿正直に答えている。

そんなふうに若干俺も舞い上がっていたのだが、今の質問で急激に、萎えた。

他の奴が『好きなタイプは?』と訊いてきたら、俺は格好つけて、そうだなあと答えでもしていただろう。っつーか幸村くん、横で「健康な子かな」とか答えんなよ。質問している奴の笑顔固まってんだろィ。

だがこの質問をしてきたのは理恵で。

そう、よりにもよって、俺の、好きな奴。

「ねねね!丸井は、どんな子が好きなの!?」

理恵は俺の気も知らず、ずずいと身を乗り出し、野次馬根性丸出しで再び問いかけてくる。

…コイツは…。

デートに誘ったり、体育祭のダンスのペアに誘ったり、結構アピールしてきたつもりだったのに、全然気づいてねえのかよ。おいおい勘弁してくれ。

俺は苦々しい眼差しを理恵に投げつけるが、理恵は全く意に介していない様子。

ぶちんっと堪忍袋の尾が切れた。

「食い物くれるやつ」
「は?」
「聞こえなかったのかよ。食い物くれる奴って言ってんだろィ」

なげやりになってそう言う。
理恵はぽかんと数秒間口を開いた後、けたましい笑い声を上げた。

「あはははっ!なっ、なにそれっ!餌付けかよっ!っていうかさあ、」

理恵は目じりに浮かんでいる涙を拭いながら、息も絶え絶えに言った。

「それじゃあ、私も丸井の好みのタイプに入っちゃうじゃん!」

お前だバーカ。








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