焦がれているのです



丸井くんは、ずるい。


「吉野ー」

「はははははい!!」

隣の席の丸井くんが机に突っ伏し、顔だけ私の方に向ける。
そ、その大きなくりくり目で私を見つめるな…!死にそうになるから…!

「腹、減った」

「う、うん」

「お菓子、ちょーだい」

「は、はい」

私は丸井くんの言われるがままに、いそいそと巾着から一口チョコレートを数個取り出す。

「ど、どうぞ」

「サーンキュー…って、溶けてんじゃん」

「、え?…うわ!」

自分の掌を見ると、少しぐちゃっと溶けて形の潰れたチョコレートの姿が。

「ま、チョコはチョコだし」

丸井くんは私の掌からチョコレートを受け取る。

丸井くんの指が、私の掌に当たる。

それだけのことが私の全身に熱を持たせる。多分私の血液は沸騰中だ。


ずるいずるい。

丸井くんはずるい。


「吉野の手にチョコついちゃってんじゃん」

「あ、え、ほんとだ」

「うまそう。舐めてもいい?」

私は驚きのあまり、硬直化した。


舐める?

丸井くんが、私の、体の一部に、

舌を這わす?

そのことを想像すると、ぞくっと生理的な震えが走った。


「バッカ。冗談だよ」

丸井くんはくしゃっと顔を歪めて、悪戯っぽく笑う。




ずるいずるい。


私が丸井くんのこと好きなの知ってるくせに。


丸井くんなんて嫌いで、大好きだ。






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