その舌でとかして



「あー、お腹へったー」

がさごそとかばんの中をあさってメロンパンを取り出す。

「お。いいのう。俺にも一口くれんか?」

「いいよー」

わたしはメロンパンを一口大にちぎり、仁王に差し出す。仁王が口を開いたからそのまま口に放り込んでやる。なんだろう、動物園の飼育員の気分。

「うん…なかなか美味いメロンパンじゃのう」

「でしょー?前ブン太が連れてってくれたパン屋のメロンパンなんだ」

「おうおう。お熱いのう」

わたしとブン太は三週間ほど前から付き合っている。出来立てのほやほやの熱々カップルです。仁王はわたしの惚気を嫌な顔一つせず聞いてくれるものすごいいいやつ。

「仁王ほんと好きー」

「なんじゃ突然」

仁王のいい人さをしみじみと実感し、目頭が熱くなる。だってほかの友達は惚気ようとしたらすぐリア充爆発しろとか言うからこあい。

「仁王もう一口あげる」

「なんかよくわからんが貰えるモンは貰っとくぜよ」

口を大きく開ける仁王の口の中に再びほうり込む。ナイッシュー。わたしバスケ部に入ろうかな。

わたしと仁王の間に入るようにダンッ、と勢いよく大きな掌が机にたたき付けられる。見上げた先には少しむくれた顔のブン太。

「どしたの、ブン太」

「メロンパンくれ」

へ、とマヌケな声を漏らし、わたしはメロンパンを食べる。…っつ、あ。

「ゴメン、食べたわず」

ゴメンちゃい、と舌を出してぶりっ子して謝る。

「まだ間に合うだろぃ」

気がつくと、ブン太の顔がすごい近くにあって。目ぇ大きいなあブン太。わたしよりもでかいんじゃね?うわちょい腹立つ。なんて思ってると後頭部に手を回され、無理矢理ブン太の唇に合わされる。

むぐ、とか、ふぐ、とか色気のない声を出すと無理矢理口をこじ開けられた。生暖かい感触が口内に侵入してくる。

上の歯、下の歯ぞろりと舐められ、舌と舌が絡まり合う。

「なかなかうまいメロンパンだったぜぃ」

ブン太は唇を離し、涎を手の甲で乱暴に拭って悪戯っぽく笑うからきゅーんとした。








「いやきゅーんとしたじゃないぜよ。そこは普通『こんなとこで何すんのよおっ』って憤慨するとこじゃ」

「いやわたしら人の目とか気にしないタイプなんで」

「だな」

「俺が言うのもなんじゃがおまんら人に迷惑かけるなって親から習わんかったか?」





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