愛していますよ、残念ながら私は自他ともに認めるおっちょこちょいだ。
料理では塩と砂糖を間違え、燃えるゴミの日に燃えないゴミを出し、間違えて違う番組を録画するなんていうのは日常茶飯事だ。
いつもいつも間違えてばかりいる。
なにもかも。
「またサボっているんですか、沖田さん」
沖田さんは白昼堂々草原で寝転がっていた。そして奇妙な赤いアイマスクを少し額にずらし、まぶしげに目を細めて私を見上げた。
「…なんでィ。ここはパンツがチラっと見えるトラブルな展開だろィ、ここは」
「そんな簡単に私のパンツは見せません見たいなら私を口説き落としなさい」
「めんどくせェ。それにてめぇのパンツなんて見たら吐くオボロロロ」
「死ねばいいのに」
「お巡りさんの心がきーずついたー。公務執行害で逮捕〜」
こんなふざけた人間が江戸の治安を預かる真撰組の切り込み隊長なのだというから世も末だ。てゆうかわたしゃ情けないよこんな人間に守られてるだなんて。
見下ろして喋るのも疲れたので沖田さんの横にゆっくりと腰を下ろした。
「沖田さんって仕事サボってばっかですよね。本当に働いているんですか?」
「寝る暇もなく働いてまさァ」
「現在進行形で嘘をつかないでくださるかしら」
「真昼間とは言え…毎回毎回一人でこんなとこで寝てたらいつか襲われますよ」
沖田さんは真っ青な空を見上げながら言った。
「じゃあ、なんでお前は今襲ってこないんでィ」
ザアッと一陣の風が私と沖田さんの間を翔けた。
少しの間呆け、ああ、そうかとやっと悟る。
この人はやっぱり、なにもかも知っていたのだと。
今までもたくさん間違いを犯してきた。
けど今回の間違いは本当に洒落にならない。
兄の仇に惚れるなんて。
「…わかりません」
兄がいなくなって私の世界は色を無くした。
けど、沖田さんに出会ってしだいにまた世界は色付き始めた。
世界ってやつは沖田さんに負けないサディストぶりだ。
愛していますよ、残念ながら
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