Q.E.D「沖田くんって最低だよね」
「は?」
「だってそうじゃんか。女の子をドSコートしたり調教したり騙したり最低としか言えないよ」
俺は唖然とした。コイツは人の長所を見つけるのは得意だが、短所を見つけるのが苦手という近藤さんみたいな奴で、人の悪口を言うことはめったにない。なのに、今日はこの毒舌っぷりだ。
「しかもなんなの。好きな子が自尊心が強い子って。その方が調教しやすいって。貴方は女性を何だと思っているの?平気で女性に手を挙げるしいじめるし。最っ低」
いつもはぼやっとしたマヌケな笑顔を浮かべている顔面には、今日はツンと済ました真顔が貼付けられている。
…Sは打たれ弱れやすいんってのによォ。
認めるのは悔しいが惚れた女に、ここまでけなされると、俺の硝子のハートに傷がつく。
「何が言いたいんでィ」
「別に、何も」
苛々を露にした口調で聞く俺を意にも介さず、冷静に答える穂乃花。
何なんでィ、本当。
俺はガキのようにむくれながら、穂乃花がキレてる理由を思案した。
…あ、そーいうこと、か。
緩む頬が抑えられない。
ああ、そう、そういうことか。
俺は穂乃花のおさげを、ぐいと引っ張った。
「いっ」
穂乃花は苦痛で顔を歪め、小さく叫ぶが、そんなの俺にとって何の枷にもならない。むしろ、興奮材料。
「お前、嫉妬してんだろィ」
わざと耳元で囁いてやる。
びくつく体。
茹蛸のような耳まで染まる真っ赤な顔。
魚のようにパクパク動く口。
奴が嫉妬してるかどうか。
証明、終了。
Q.E.D
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