※前の話と同じシリーズ
「じゃっじゃじゃーん!どうですか、恭弥くん!」
くるりとまわるとスカートも一緒にくるりとまわって広がる。そんな私を一瞥すると、ソファーに寝そべっている恭弥くんは興味なさそうに、くあと欠伸をした。むっとしかめっ面で私はちょっとォと不機嫌を露にして恭弥くんに声をかける。
「なにか言ってよ〜!」
「歩が服を着ている」
「そういうことじゃなくて!メイドですよメイド!恭弥くんなんとも思わないの?」
「思わない」
即座に斬り捨てるように返された。あまりの素っ気なさに眩暈を覚える。足元がふらつく。この前チューした仲だというのになんて冷たいの…。あのあと、なんでチューしたのねえねえとしつこく問いただしたのだが、恭弥くんは聞く耳を持たなかった。つんと澄ました顔で読書したりトンファーを磨いたりして、全く、聞く耳を持たなかった。
もしかしたら私のこと好きなのかな?と思ったんだけど、それは勘違いだったようだ。だって、普通好きな女の子のメイド姿を見たら少しは反応するだろう。メイド喫茶でバイトしている友達からわざわざ借りてきたのに。もう何をしても何を言っても恭弥くんから反応は得られないだろうと思いつつも、動揺した姿をひとつでも見たくて、ベッドに腕をのせて「ねえねえ」と恭弥くんにしつこく話しかける。
「恭弥くん〜メイドだよ〜」
「ご主人様〜」
「イエス・マイロード」
「ねえってば〜…へ?」
「イエス・マイロードって言って」
恭弥くんは天井を見あげて私に視線を寄越さないままの状態で淡々と言う。い、いえすまいろーど…?
「なにそれ、何語?」
「きみ、よく高校生になれたね。いいから言って」
「い、いえす…まいろーど…?」
言葉の意味がわからないので、頭上にハテナマークを浮かべながらぎこちなくその言葉を口にする。言い終えると、恭弥くんが顔を私に向けた。いつも通りのポーカーフェイスだ。二、三秒の間私の顔をじっと見据えたあと、また天井に顔を向けた。目を閉じて、身じろぎひとつしなくなって、一分後に聞こえてきたのは静かな寝息。
「な、なんだったんだ…?」
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