生まれた時から悪い人は悪い人でしかなくて、良い人は良い人でしかない。そう決まっていると思っていた。

目の前の私より一つか二つ年上であるだろう青年は呆れたように眉を潜めて、口角をあげながら、私に視線を合わせるようにしてしゃがみこんだ。わたしの隣には死んだように眠っている男の人。青年が先ほどドミネーターで撃ったから倒れたのだ。死んだように眠っているのではない。もしかしたら。

「死んじゃったの?」

人を殺したかもしれない人なのに、不思議と怯えはなかった。助けてくれたからだろうか。いや、そういうことではない。直感だ。この人は私を傷つけないという直感が働いた。

「いんや。死んでないよ。そこまで犯罪係数は上がんなかったみたいだわ。まー施設行きは免れないだろうけど」

青年はちらりと伸びている男の人に視線を遣る。

「ご愁傷様」

労りの言葉なのに、温かみを感じられなかった。

「あなた、執行官?」

「よくわかったね。監視官とかは思わなかったの?」

「なんとなく。勘」

「勘か。…ま〜色相がお綺麗な監視官と濁りまくった執行官じゃ全然違うわな」

ははっと自嘲するように笑う。

「全然違うって、どこが?」

「どこがって…。違うだろ。違うからあんただってわかったんだろ」

「わかったけど、違いなんてそんなないよ。目と鼻と口があって、手が二本あって足が二本あって、変わらないじゃない、監視官の人たちと一緒じゃない。なんで、なにが、全然違うの?」

まくし立てるように質問攻めすると、青年がぽかんと口を開いた。それから、くくっと喉で笑った。馬鹿にされたようで気分が悪い。眉間に皺が寄った。笑ってないで答えてと言おうと口を開いた時だった。

「縢!」

眼鏡の男の人が眉を吊り上げながら誰かを呼んだ。

青年が振り向いた。

振り向く、ということは。彼の名前は、かがりというのだろう。

かがり。

「犯人を捕まえたなら捕まえたとさっさと連絡を寄越せ!!それから被害者とあまり関わるな!彼女の色相まで濁ったらどうする!」

「あーへいへい、すんませんでした」

ぽりぽりと頬をかきながら口先だけで謝るかがりくんに、眼鏡の男の人の眼鏡の奥の瞳に怒りがどんどん増していく。さらに怒鳴ろうと口を開く前に、私はかがりくんの袖を引っ張った。

かがりくんが驚いたように振り向いた。

目と目があう。かがりくんの瞳の中に私が確かに存在していた。

「かがりくん」

彼の名前を一字一句噛みしめるようにして呼ぶ。

「次はいつ会える?」

かがりくんの目が少し見張った。だがそれは一瞬のことで、次の瞬間には少し意地悪そうに細まった。悪戯が成功した子供のように口元を人差し指でおさえて笑う。

「またあんたが犯罪に巻き込まれたらな」

悪い人は悪い人。良い人は良い人。

でもなんだかこの人は、悪い人でもあって、良い人でもある。

そんな気がした。












みたいなのを妄想はしています!(笑)
世間の常識にとらわれない子が縢くんのお相手かなーとは思っているのでちょっと浮世離れした夢主になりました。縢君の夢小説書くとしたら薄桜鬼の薫の時みたいな悲恋ものしか書けないと思いますがいつか挑戦してみたい。いうだけならタダです(笑)

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