「聞いてくれ小川!!」

「はいはい、なんですか」

わたしはゆっくりした口調で答える。東堂が私の前の席に回り込んで椅子を勢いよく引いてこれまた勢いよく座った。そしてこれまたこれまた勢いよく話し始める。顔に唾が飛びそう。それは嫌だなあ。

「俺は重大なことに気付いてしまった…!!」

「ほうほう」

「俺はモテる。ものすごくモテる」

「うん、モテモテだねえ」

「だが…俺は…今まで一度も…付き合ったことがないんだ!!」

東堂は世界の終りを謳うように頭を抱えて嘆き、悲しむ。

「うん。そうだねえ」

「反応薄いぞ!!」

眉を吊り上げてわたしに食って掛かる東堂。おお、綺麗な眉毛。今日も綺麗な眉だなあ。
わたしは東堂の眉を観察してから返事をしていないことを思い出してゆっくりと言葉を紡ぐ。

「だって、わたし、知っているもん。東堂が彼女作ったことないって。今更言われてもなあ」

「なん…だと…」

東堂はよろめいた。そしてバン!と机に拳を下ろした。いた…っ、と東堂が小さく悲鳴をあげたのは聞こえなかった振りをしてあげよう。東堂、かっこつけだから。

「なんで言ってくれなかったんだ!?おかげで俺は彼女いない歴イコール年齢というはたからみたらただのモテない男ではないか!」

「わたしだって彼氏いない歴イコール年齢だよ〜」

「お前はモテていないだろう!俺はモテモテなんだ!」

「失礼ですなあ、東堂は。まあ、本当のことだけど」

東堂はハァ〜と息を吐いてから机に寝そべった。

「…うう、今は自転車のことしか考えられない。そんな状態で彼女を作るのも彼女に失礼だ…。だがしかし…、いや…しかし…しかし…」

「東堂?」

「うーん、うーん」

机に突っ伏したまま、唸っている。大丈夫かな…?
東堂の背中に手を伸ばそうとした時だった。

伸ばした手は空を切った。

東堂が勢いよく立ちあがって、高らかに宣言した。

「俺は、彼女を作る!!」

え。

わたしは瞬きをした。ぱちぱち。ぱちぱち。じんぱち。ぱちぱち。

「だから、小川!」

東堂はわたしの手を両手で挟むようにして包み込んだ。真剣な瞳がすぐ目の前にある。

「協力してくれ!」

え。えーっと。どうしよう。

わたし、東堂のこと、好きなんだけど。

でもそんなことは、わたしのことを“友達”と信頼しきっている東堂に言えるはずがなくて、必死に頼み込んでくる東堂を払いのけるなんてこと、わたしにはできなくて。

「しょうがないなあ」

そう答えてしまった。

「ほ、本当か!?ありがとう!ありがとう!!」

狂喜する東堂を見て、にこにこ笑いながら思う。

ああ、わたしって、本当に馬鹿だ。









という話を思いついていることは思いついています。東堂さんのことが好きなおかん系女子という…。好きな人の彼女づくりを手伝うという切ない系を…。荒北さんも出番多いお話になりそうです。東堂さんの「マジで好きにはさせないぜ!?」痺れましたー。




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