臆病者の恋愛歌 | ナノ


「きょ、きょきょ今日から少しの間、事務や経理などをさせていただく山川小春と申します!なんにもご迷惑をおかけしないので殴らないで下さい斬らないで下さい殺さないで下さい!!」

「お前俺達をなんだと思ってんだ」

土方さんが呆れた眼差しをわたしに向ける。

真選組=チンピラ警察と思ってます。てへぺろっ!なんて口が裂けても言えません。

わたしは近藤さんに連れられ、『短期バイトとはいえ、これで君も立派な真選組の一員だ!』と言われ、真撰組の隊士さん達全員を集めた和室の前にたって自己紹介をさせられた。近藤さんがわたしに好意を持ってくれているのは嬉しいが、ぶっちゃけ真撰組の一員になれてもそこまで嬉しくない。だってこの人達怖いんだもの柄悪いんだもの。警察ってゆうかチンピラに近いもの。

前にいる人達も怖い顔ばかりだし…。あああやっぱやめときゃよかったかなあ。ああでも食費は欲しいし。

この期に及んで、まだうじうじ頭を抱えて悩んでいる、と。

「ぃやったああああ!女だァァァァ!!」

「これでやっとむさ苦しくなくなるゥゥゥ!!」

次々とわたしを歓迎する歓声が響いた。

予想外の展開にわたしは目をぱちくりする。

「小春ちゃん!これからよろしく!」

「困ったことがあったら何でも俺に聞いて!」

チンピラのような恐持ての人達にそう言いながら詰め寄られ、わたしは苦笑いを浮かべて対応する。

あああ顔怖いから近づかないでええええ。と、恐怖する気持ちも、もちろんあるが、

これって…もしかして…わたし、

モテキじゃね!?

と、浮かれる気持ちのが勝っていた。


いやあ、そんな照れるなあ〜、と照れ隠しに頭を掻いていると、

―――ぎゅうううう

「いだだだだだだ!!!」

頬を顔の原形がなくなるくらいに思い切り引っ張られた。

こんなことをするのはもちろんあの方ですよ、ええ。

「調子にのんじゃねえでさァ、メスブタが」

沖田さんが、どす黒いオーラを放ちながら、わたしの耳元に口を寄せて低い声で囁いた。


そして唐突に頬を放されたので、頬に返ってきた衝撃がすごく、わたしはあまりの痛さに苦悶の表情を浮かべた。

そんなわたしを見て沖田さんはすごく楽しそうです。
この人の異常加虐性癖がわたしは世界一恐ろしいです。

「総悟ォォ!何してるんだお前は!」
と、近藤さんが怒鳴ったのに続いて、隊士さん達も「そうっすよ隊長!」「小春ちゃんがかわいそうじゃないですか!」と沖田さんを非難する。

み、皆さん…!とわたしは手を組んで感動する。

沖田さんは「おい、お前ら」と前に向き直った。
そして今度はわたしの髪の毛を掴み、自分の方に強引に引き寄せた。もうなんなのこの人。わたしをなんだと思ってるの。…多分ゴミだと思っているんだろうねアッハッハッハ!!


「コイツの顔を、よーく見てみろィ。
ひっくいだんごっ鼻が特徴的な、雪見だいふくみてえな乳臭いガキの顔じゃねえか。
そんな大騒ぎするほどか?」


…、と水を打ったように静まり返った。


確かに…と、誰が言ったわけでもないが、沖田さんの意見に同意するムードに包まれた。


辞めたい帰りたい泣きたい。




電池が消耗しています


「あれ、お前何震えてるんでィ?」

「べづに、な゛に゛も゛」

「うわあああ小春くんんん!泣かないでくれええ!おいお前らも小春くんを慰めろ!!」

「はっ!小春ちゃん!君、うん、普通にかわいいよ!なんか見てたら雪見だいふく食いたくなるし!!」

涙がこぼれ落ちないように、上を向いたら暗黒微笑を携えたサディスティック星の王子と目が合った。

絶対泣くもんか、負けるもんかァァァァ!うわああああ!!と、強く思った。BGMは、中島美嘉のLIFEでどーぞ。





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