2022/06/04(Sat)


 私は乾なんたら(下の名前忘れた)という男がとにかく嫌いだ。ガサツだし馬鹿だし乱暴だし口悪いし無神経だしとにかく嫌いだ。とにかく嫌いでもうホンットに嫌いで大嫌いなんだけど、この感情は抱いていなかった。

 ――変態

「な、なんでアンタここにいんの!!!」

 某下着屋にいる乾を指さしながら叫ぶと、乾は不愉快そうに眉を寄せた。「

「なんでテメェにンなこと答えなきゃなんねえんだよ」
「下着屋だからに決まってんでしょ!!!! 女もんなんだけど!!! マジキモい!!! マジキモい!!!!! マジで!!!!! キモい!!!!!!!」
「あー、麻美ちゃん! 違う、違うんだって! 私がついてきてって言ったの!」
「……は!?」

 鳥肌を総立ちさせながら仰け反っていると、乾の彼女の趣味悪子(名前覚える気なし)が割り込んで来た。そして訳のわからないことを言った。

「つ、ついてきてってアンタ、い、乾、男なんだけど」
「まーそうだけど。でも彼氏だし。どーせ見せるし」

 趣味悪子は躊躇うことなく、しれっと答えた。あっけらかんとした口ぶりに、私は唖然とする。見せるって、こいつら、その、つまり、

「青宗君、麻美ちゃん嫌がってるし違うお店にしよっか」
「コイツに合わせる事ねぇだろ。おいブス今すぐ消えろ」
「なんで私が消えなきゃなんないの! あんたらみたいな恥じらいゼロの馬鹿の為に!!!」
「こっちのセリフだ。生き恥そのもののオマエの為にわざわざ動きたくねえ」
「はぁ〜〜? 生き恥はアンタでしょこの前科持ち!!」
「テメェは生きてること自体が罪だろうが」
「あーー! 二人とも二人とも落ち着いて! わかった、私達はこっちいく! さっさと選ぶね!」

 愛想笑いを貼り付けた趣味悪子は乾の腕に自分の手を絡めて、離れて行った。腕を組む姿は全く無理がなく、自然な動作だった。カップルって感じの動き。日々片思い歴を更新している私にの神経を逆撫でた。え、死んでほしい! 超超超死んでほしい! つーか死ね!!!!

「す、すごい殺気を感じる……。さっさと選ぼ……」
「大丈夫だ。オレに任せろ」
「青宗君指の関節鳴らさないで!!! 戦闘準備しないで!!!」



 
 あいつ等より先に出て行くのはなんだか負けたような気がするので、あいつ等が出てから出て行く事にした。ヤリチンとビッチと同じ空間で呼吸していると清廉なる私もビッチ化してしまいそうなので、なるべく息をしないように心掛けながら下着を選ぶ。

 そう、私は清純派美少女なのだ。趣味悪子のように好きな男に下着を見られる事に無抵抗なビッチとは違う。(※過去無理矢理ココに胸を揉ませたことは棚に上げている)
 部屋に入れた時、ココにブラ見せられた時は本当に恥ずかしかった。好きな男に自分の下着を見られて、もう、本当に、全身の血液が沸騰した。嫌って訳じゃないけど恥ずかしくて、狼狽えまくる私とは対照的にココは平然としていた。ああああ! あいつは私の純情な思いを何だと思ってんの!!!
 
「青宗君こっちとこっちどっちがいいー?」

 羞恥に打ち震えながらぎりぎり歯を噛みしめていると、趣味悪子の馬鹿丸出しの声が店の一角から聞こえた。せいしゅうってなにそういやさっきも……。

「どっちも同じだろ」

 オマエか!!!!
 乾の下の名前という世界一どうでもいい情報を手にした。どうでもいい! ほんっっっとにどうでもいい!! 行く予定のない明日のブラジルの天気のがまだ需要あるわ!!!

「えー違うよー! こっち紐パンでこっちTバックじゃん!」

 ぎdj、s@どsdjgそpdfg、spfgsfどgpsdfgs

 趣味悪子の声はそんなに大きくないけど、奴等の会話は私の耳に流れ込んで来た。いや聞き耳立てている訳じゃない。別に付き合っているカップルが下着屋でどんな会話するのか予習の為に聞いている訳ではない断じてない違うからホント違うから。

「じゃあ紐」
「んじゃこっちにしよー!」

 趣味悪子意味わかんない好きな男にこれから履くパンツ見られてなんで平然としてんのつーかなに選ばせてんのつーか乾も何紐選んでんだよキモいていうか恥ずかしくないのウソでしょなに処女じゃないから? 処女じゃないからの余裕? は? 乾の彼女の分際プラス顔面偏差値私より低い癖に生意気なんだけど!?!?

 私はココと付き合いたい。というか付き合う。というか結婚する。でも、付き合うという事が、乾のクソと趣味悪子のような事を指すというのならば、私はココに自分がこれから身に着ける下着を選んでもらい、そしてココの事を下の名前で呼び、つまり、はじ、はじ、はじ――。

「あー、これ可愛い! ね、これどう?」
「透けてる」
「透けてるのいやー?」
「嫌じゃねえ」
 
 ――プチッ

 私の中で何かが切れた。

 清純派美少女の私はDQNカップルに近づき、乾のクソバカの背中を蹴ろうとして――避けられた。

「ちょっと!! 何避けてんの!!! 避けんじゃねーよ!!!」
「蹴られたくねぇからに決まってんだろンだよ絡んでくんなよ死ねブス」
「うるさい!!! オマエらが死ね!!! このヤリチン!! ヤリマン!!!」
「ちょ、麻美ちゃんそんな大声で……! ていうか私は青宗君以外とは」
「うるっせーよ非処女は皆ビッチなんだよ死ね!!!!」
「あ゛? なんで陽子が死ななきゃいけねんだよオマエが死ねこの××××××」
「青宗君!!! 庇ってくれてありがとうだけどそこそこの声量で放送禁止用語言わないで!!」
「あのお客様達……そのお静かに……」
「あっはいすみません二人とも落ち着い、」 
「は〜〜〜〜!? アンタこそこの××××で×××××で××××××!!!」
「テメェの×××こそ使い物なんねぇだろ誰も使わねぇけどこの××××××」
「………………助けてドラケン君……………」
 





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◆あとがき
陽子は元彼二人いる経験者である事とあと元々の性格が大雑把なので彼氏になら下着を見せたり選んでもらうことに全く抵抗がない感じです。イヌピーはついてきてと言われたから着いていきました。あまり何も考えていません。
麻美は性格は高飛車で我儘ですが純情なのでココにパンツ見られたら「ああああああああああああああああああああああああ」となります。

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