2015/03/11(Wed)


星が名前をつけられない限り存在を証明できないように想いも声に出さないと証明されない。

だから、私は今日も想いを伝えようとする。

「手嶋先輩!すき、」

「すき焼きうめーよな。今度みんなで食いに行くか」

そして、流される。

手嶋先輩は、現在彼女を欲していない。
インハイに向けて自転車のこと以外目を向けられないそうで、気になる子とのカラオケすら断ったそうだ。ちなみに私は手嶋先輩に気になる子がいると知ったとき白眼を向きながらぶっ倒れて保健室に運ばれた。先輩が自転車にかけてる想いは手嶋先輩目当てで入部…ゲフンゲフンふんふふーん、まあ私の入部理由なんてどうでもいい…そう手嶋先輩の自転車にインハイに懸ける熱い想いはマネージャーである私に十二分に伝わっている。けど最近手嶋先輩はモテるのだ。イチャイチャできなくてもデートできなくてもいいからとりあえず彼女という名の先輩の隣の指定席を確保しときたいのだ。しかし、こうやっていつものらりくらりとかわされている。

うぐぐぐぐと唸りながら手嶋先輩をじっとりした目付きで睨む。手嶋先輩は「さ、部活だ部活だー自転車楽しいなー」と棒読みで言いながらくるりと私に背を向ける。が、私はネバーギブアップ精神を発揮して手嶋先輩の横に並ぶ。

「手嶋先輩!私先輩とつきあ、」

「月明かりふんわり落ちてくる夜には〜ってしんちゃんのEDにあったよな」

「わー懐かしい!私その曲好きです!そして手嶋先輩のことは、」

「ちょっくら便所行ってくるわ」

「手嶋せんぱーーい!!」

伸ばした手は手嶋先輩を掴むことなく宙を漂った。ばたん、と無慈悲に閉じられたドア。

「先輩マジで避けられてるッスねー!」

能天気な鏑木の声はただの真実で。真実でしかなくて。真実というものは真実故に人を深く傷つけるもので。グサッと私のハートに真実という名の刃が突き刺さったのだった。四つん這いになって項垂れる私を小野田くん以外誰も気にしない。小野田くんは優しいから。他のみんなはもう見慣れた光景として受け止めている。手嶋先輩の背中が消えたドアを涙目でキッと睨む。

「…絶対彼女になってやるんだから…!」





がんばらねーばねばねばぎぶあっぷ!

「悪寒が…ハハハ笑えねえ〜」


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