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「鈴木財閥主催のパーティー?」
「うん!各界の著名人も来るわよ!どう?」
「どこでやるの?」
「そりゃあもちろん、うちのフェリーよ!」


ふふん、と得意げに言う園子を前に、蘭と私は顔を見合わせた。
相変わらずスケールが違うね、と蘭に言えば本当にねと彼女は小さく笑う。
以前にも園子にはパーティーに誘ってもらったことがあったっけ。
その時は都合がつかなくて行けなかった覚えがある。


「世界最大のダイヤと言われるゴールデンジュビリーが見られるわよ!」
「ゴールデンジュビリー?」


知ってる?と蘭に聞かれて首を振った。
世界最大のダイヤモンド、ゴールデンジュビリー 。
携帯で検索すると、すぐにいくつか写真が出てきた。
珍しい、オレンジ色のダイヤだった。
すごく綺麗な色をしている。
…こんなに綺麗だったら心奪われる人がいるのも分かるかも。


「次郎吉おじ様が日本で初めて公開するのよ!」
「次郎吉おじ様…宝石…ってことはまた怪盗キッドへの挑戦?」
「ううん。今回のダイヤは借り物らしいから、挑戦状は出してないんだって!」
「そうなんだ」
「でも私はキッド様が来ると思ってるわ!来ないわけがないもの!」


意気揚々とキッドの名を出す園子。
頬に手を添えながら言うその様子は完全に恋をしている女の子だ。
思わず蘭と顔を合わせて苦笑する。
京極さんは?と問いかけるとそれとこれとは別よ!とはね返された。

園子の怪盗キッドへのファン度は常に増している気がする。
いつも次郎吉おじさんが宝石を盗られて悔しがっている横で、キッドの盗みの成功を喜んでいるイメージしかない。
その図が園子らしくて楽しいんだけど。


「今度の日曜よ!なまえは前来られなかったから是非来てね!」
「うん、行きたい!蘭も行く?」
「うん。お父さんとコナン君も誘ってみるわ」
「決まりね!」


フェリーでパーティー。しかも世界最大のダイヤモンドのお披露目会。
…楽しみ。







「うわ…!めちゃくちゃ大きい…」


園子に誘ってもらったパーティーに参加するため、港に来たのだが。
教えてもらっていたフェリーを見て驚いた。
かなり大きい。
違う船じゃないかと園子が送ってくれた写真と見比べるが、確かにこのフェリーだった。
見上げても天辺は見えない。
鈴木財閥すごすぎ…


「なまえちゃん!」


フェリーに圧倒されたまま立ち尽くしていると、名前を呼ばれる。
声が聞こえた方に視線をやると、蘭と父親の小五郎おじさん、そして新一がいた。
大きく手を振る蘭に自分も振り返す。


「蘭!それに小五郎おじさんも。お久しぶりです」
「久しぶりだな!元気そうでなによりだ」
「小五郎おじさんも元気そうで。えっとコナンくんはこの間ぶりだね」
「うん!」


蘭達と合流できてよかった。
ほっとして一緒に中に入って行く。
入口にいた受付の男性に名前を書くよう促され、ちょうど上着を預けたところで園子が手を挙げながら駆け寄って来た。


「蘭!なまえ!来てくれてありがとう!それに小五郎おじ様とガキんちょも」
「すごい大きい船でびっくりしたよ」
「うちの所有するフェリーで一番大きいからね!さ、着替えに行きましょ!」
「え?着替え?」
「今日はパーティーよ!全員分ドレスもスーツも用意してるから!」


早く早く!と園子に連れられて、蘭と私はある部屋に案内された。
小五郎おじさんとコナン君も別室を案内されたようだ。
部屋に入ると、何十着ものドレスが用意されていて。
それに感動する間もなく園子がいくつかドレスを持って来て蘭と私に渡した。
そのまま半ば強引に試着室に突っ込まれ、とりあえず渡されたドレスに着替える。
蘭はサーモンピンク、私はターコイズブルーのドレスだ。
私達の姿を見た園子は満足そうに頷いた。


「二人ともすごく似合ってるじゃない!」
「そう?」
「新一くん…じゃなかった。あんたのダンナに見せたいくらいよ、蘭」
「だからダンナって…もう園子!」
「なまえも、もしかしたら今日声かけられたりしちゃうかもね!」


鏡を見る。
肩が開いているデザインでオフショルドレスだ。
こんなドレス着たことないから緊張するけど、デザインもカラーもすごく可愛くてなんとなくテンションが上がる。
イヤリングやネックレスも貸してもらって、ヘアメイクもしてもらった。

部屋を出ると、すでに小五郎おじさんと新一はスーツに着替えて待っていて。
蘭のドレス姿を見た新一の目が輝いている。
…相変わらずわかりやすい。
蘭達の目を盗み見て、屈みながら耳打ちした。


「蘭に見惚れすぎ」
「!?う、うっせーな!」
「可愛いよねえ。ウンウンわかるわかる」
「からかうんじゃねえ!」


新一が動揺しながら怒ってくる。
本当に蘭のこと好きだよね、新一は。
笑いながら言うと、彼は顔を赤くしながらうるせえ、と呟いた。







「さて、と。まずは船内偵察だな」


鈴木次郎吉が世界最大のダイヤモンドを日本で公開するという情報を聞いて、フェリーに潜入したのは数刻前。

怪盗キッドとしてそのダイヤを盗むためにスタッフに変装して忍び込んでいた。
今回オレに挑戦状を叩きつけていないせいか、世界最大のダイヤモンドがあるといえどもいつもよりも警備が手薄だった。

まずは船内の構造を頭に入れて…と。


「すみません。お手洗いってどこですか?」
「え?ああ、それならあちらの…」


突然、おそらくパーティーに参加する客、ドレスを着た女性に話しかけられてトイレの場所を指す。
しかし言いかけた言葉は途中で詰まった。
何故ならその女性はよく知っている人物で。

ドレスを着て、綺麗にメイクをしているが、よく見るとなまえだった。

突然言葉に詰まったオレを不思議そうに見上げてくる。
…いや、それは反則だろ。
いつもの何倍も可愛く見えるメイクとその仕草に思わず固まる。


「?どうかしましたか?」
「あ、ああ、すみません。あちらの突き当たり右になります」
「ありがとうございます」


慌てて答えると、小さくお辞儀をしながらなまえはそのまま廊下の奥に消えていった。


「ビビったー…」


何故彼女がここにいる。
一人で来ていることはないだろう。
周りを見渡して少し先に見えた人物でその答えはすぐにわかった。
名探偵がいる。それにいつもの姉ちゃんに、鈴木財閥のお嬢様も。
そういうことか。


「…面白くなりそうだぜ」


思わず口角が上がる。
悪いが今回は成功させてもらうからな、名探偵。
心の中で呟きながら踵を返して、その場を後にした。


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