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「#エロ」のBL小説を読む
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特別だと思ったことはない。
自分はいつだって平凡だ。


03


日本に代々伝わる神社。
そこに全ての神を統べる最高位の神がいることは知っていた。
そして神社を守る家系がシャーマンであり、その神を操るということも。
そんな神の魂をスピリットオブファイアに食わせたら、どんなに強くなるだろう。
そう考えて、初めは食わせるつもりだった。

しかしその神を操る少女と対峙した時、彼女は他の人間と違う存在だとわかった。

自分の霊視能力が効かなかったのだ。

出会う全ての人間の心を読んできた自分が、彼女の心だけは全く視えなかった。
そして身に付けていたネックレスを彼女が掴んだその時、恐ろしいほど巫力が上昇した。

彼女は一体。

この千年の間で人間に初めて心から興味が沸いた瞬間だった。





「やあ」
『あ!おにいちゃん!』
「また来てる…」


このところハオは頻繁に顔を出すようになっていた。
おかげで相太もすっかり懐いてしまっていて。
嬉しそうに駆け寄ってくる相太にハオも笑顔で応えている辺り、彼も子供は好きなんだろう。
そういえば自分の仲間に小さい子供もいると言っていたっけ。
縁側に座っていた私の隣にハオが腰掛ける。


「ハオも食べる?」
「いいのかい」
「うん」


相太と分け合って食べていたメロンパンをさらに半分にしてハオに渡す。
ハオがここに来る日常にはすっかり慣れていた。
初めて会った時に対峙したのが嘘に思えるくらいだ。
あれから一度もスピリットオブファイアを見ていないし、彼は本当に仲間にならないか聞きに来るだけだった。
メロンパンの最後の一口を頬張るハオを横目で見る。


「ハオってさ、諦めが悪いよね」
「一途って言ってくれないかなあ」
「どうしてそんなに私に拘るの?」
「それは君に興味があるからだよ、なまえ」


間髪入れずにそう答えたハオに思わず言葉を詰まらせる。
彼の瞳は真っ直ぐこっちを見ていた。
しばしの沈黙の後、自分で聞いたくせにへー、と適当に相槌だけ打って顔を背ける。
そんな真剣な顔で言われても困る。
誤魔化すようにメロンパンを口に入れた。


『おねえちゃんはおにいちゃんのことすきなの?』
「!?ちょ、ゲホッ」


相太からの突然の問いかけにメロンパンを喉に詰まらせる。
どこがどうしてそういう質問になった。
ハオが置いてあった水の入ったコップを渡してくれる。
面白そうに笑っているのは気のせいじゃない筈だ。
むせて何も言えない私に代わってハオがそれは違うと思うけど、と相太に言ってくれていた。
咳が落ち着いた頃、ハオが立ち上がる。


「さて、僕は行くよ」
「ねえ、ハオ」
「?」
「ハオはどうしてシャーマンキングになりたいの?」
「理想の世界を作るためさ」
「理想の世界…」
「それが僕のすべき事だからね」


それだけ言ってハオは鳥居をくぐって行ってしまった。
彼にとっての理想の世界ってなんだろう。
自分のことを自信満々に未来王なんて言ってるくらいだから、シャーマンキングになる気は満々だし。
そんなに彼を突き動かす目的ってなんだろう。

ハオが消えた先を見つめる私に相太がやっぱり…と呟いているのには気づかず、悶々と考え続けた。





「オパチョ」
「ん?」
「最近ハオ様はどこに行かれているのだ」
「しらない でもなんかたのしそう」


ラキストが聖書を開きながらオパチョに問う。
元々ずっといたわけではないが、最近は外出がかなり多かった。
ハオの一番の側近であるオパチョに聞いてもその理由はわからなかった。
魂狩りに忙しいのだろうか。
もうすぐシャーマンファイトが始まるからその準備だろうか。
ふう、とため息をついたところでドアが開いた。
今まさに考えていた人物。


「ハオ様!」
「やあ、ラキスト。オパチョもいい子にしてたかい」
「うん オパチョ ハオさまのかえりまってた!」


よしよし、とオパチョの頭を撫でるハオの表情は優しい。
オパチョが最近楽しそうと言っていたのはラキストも感じていた。
以前より威圧感が減り、優しい時が多い気がする。
よく出かけていることに関係があるのだろうか。


「ハオ様、本日はどちらへ?」
「ん?ああ、ちょっと仲間にしたい奴がいてね」
「仲間ですか」
「面白そうなんだ。色々と」


話す表情は明るい。
どうやらその仲間にしたい奴がハオの機嫌を良くしているらしい。
あのハオの機嫌をよくする人物。
会ってみたいものだ。

ハオがオパチョとお風呂に向かうのを見送って、ラキストは聖書を机の上に置いて夕飯の支度のためキッチンに向かった。

特別な少女