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「届かないものって何で掴めそうだと思うほど遠く感じるのかな」

言いながら、なまえは読んでいた本から顔を上げた。
何も言わずに静かに視線を返すだけの僕に、今の言葉への返答が何もない事を悟るとなまえはすんなりと本へ興味を戻した。
それがなんとなく面白くなくて、口を開く。

「星みたいなものだろ?」
「星?」
「見えているのに、掴めない。違うかい?」
「うーん…でも星には近づけないよ?」

腑に落ちないような表情でなまえは首を捻った。
視線は本に向けたままだ。

「掴めるなんて思うから、遠く思えるのかな」
「見えてるものは全て手に出来ると思ってしまうんだよ人間は。傲慢だよ」
「そんなこと言ったらハオも十分傲慢だよ?」
「ははっ、僕は王だからね」

そう言う僕をじとっ、と見つめるその目は決して好意的ではない。
「それが傲慢っていうの」とため息をつきながら言ったなまえは読みかけていた本を閉じた。
立ち上がった彼女の手首を掴む。
その手首はすぐにでも折れてしまいそうなほど細い。

「何?」
「なまえは掴めるんだけどなあ」
「…当たり前じゃん。ここにいるんだから」
「で、どこに行くんだい?」
「ちょっと、あっち」

頬を赤らめながら嬉しそうに視線を投げる先にはラキストの姿があった。
どうしてお前はアイツが良いんだ。
言いかけた言葉を呑み込む。
掴んでいる筈なのに、彼女は遠い。

「星が綺麗に思えるのは、きっと遠くにあるからだね」

なまえが呟いた。
言いながらラキストを見つめる目は優しい。
そして僕を振り返ることもなく、なまえはいとも簡単に僕の手から離れていった。

君にはきっと
永久に見えない


20190728
title by 誰花