「今日部活は?」
「無いけどともちゃんとちょっとだけ歌ってくる!じゃ行ってきまーす!!」
「あ、遅刻したらついでにハーゲンダッツおれの分もよろしくなー」
「なぜ!?」
「貴重な休日にお前を起こすという重労働でおれ様の手を煩わせた罰だ」
「それだけで!?」
「……許せ神流。これで最後だ」
「ぐはっ・・・!に、兄さん!・・・って何が最後だ!ちょっと声真似上手いからって調子のるなよ!!」
「ふはははは。ところで時間いいのか?」
「うわあぁぁぁぁ!!」



あ、おれチョコレートとバニラなー。などとほざく野郎は無視して、私はジリジリと照り付ける真夏の太陽の下へ飛び出した。


てかどさくさに紛れて何言ってんの。

2個買ってこいってか?
学生の懐嘗めてんのかあいつ。

意地でも間に合ってやる。
死ぬ気で駆け抜けてやる。



「私は風、風は私!私は風になる!!吹き抜けろ私っ!!」
「あら神流ちゃん。今日も元気ねぇ」
「おはようおばちゃん!日射病に気をつけてね!」

どんなに急いでいてもご近所さんへの挨拶は忘れない。


それがご町内の人気者西荻神流だ!



「てかあっつ!死ぬほどあついぞ!何でこの世界には学校なんて物があるんだ一体。どうしてこんなうら若き可憐な乙女が必死こいて真夏の太陽の元を全力疾走しなきゃならないんだ。…青春かっ!!」
「あれまぁ神流ちゃん。今日も一人で楽しそうだねぇ。」
「おはようおじいちゃん!別に楽しくないよ!畑仕事も程々にね!」



家を出て5分もしない内にシャツは汗でぐっしょりになった。


あ、そうそう。
汗といえば、冬の寒い日に汗をかくと自分の体から湯気が立ち上っているのが良く見えるよね。


昔は冬の日なんか良くやったなー。

あの頃は若かったからなー。

今見たいに全力で走りながら「ギアセカンドッッ」って叫んだっけ昔。


去年くらいに。



何故か回りの目が凄く痛かったから止めたんだよね。何でだろ。

ああ、ギア2と言えばワンピース、最新刊買わなきゃ…。


あーあ、良いな海賊は。

学校なんか行かなくて良いから毎日遊び放題漫画読み放題カラオケし放題テストもなしでしょ。

…うわっ。
それ何て幸せ?ちょっと私海賊しに行ってくるわ。


行くならイケメンも良いけど癒しがあるとこが良いいね。

可愛い女の子がいるとこ?あ、いや。動物も捨て難…あ!
ベポ!ベポに会いたい!

ハートかぁ。

私の押しメンはサンジとツンデレな(←ここ大切)チューリップ閣下だけどあそこにはローもいるし何よりあのフワフワ白熊をもふもふしたい!


「うんよし。私はハート海賊団に行こう!」
「相変わらず分けわかんないことばっかいってるね。ねぇちゃん馬鹿?」
「黙れクソガキ。ママに言い付けるぞ。子供なんぞにこの妄想の素晴らしさがわかってたまるか!」
「知りたくもない。」



近所の少年に蔑みの顔で一蹴されつつ、そんなこんなで次の角を曲がれば校門が見えて来る。

始業のチャイムまであと3分。

「しゃあっギリギリ間に合うぞ!女子力なんて知ったことか!これでハーゲンダッツは無、し………………だ?」



更に加速し、曲がり角に踏み込んだ途端、私は妙な浮遊感に襲われた。

私の足元には不自然な大穴。

はて、ここにこんなに大きなマンホールあったっけ。


何だか嫌にゆっくり時間が流れる気がして、気づく。



この浮遊感は落下によるものかと。



「………ぁっ!!」



私は悲鳴を上げる暇無く穴の底へと吸い込まれて行った。










































プルルルルルル・・・


ガチャ



「はい。西荻です」
『あ、もしもし。私神流ちゃんの友達の田中なんですけど、神流ちゃんご在宅ですか?』
「神流?まだ帰ってきてないけど。どうかしたの?」
『いえ、実は・・・』





























「え?神流が?」




[ 3/12 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -