トリップ1
『病は気から』
という言葉があるように。
人の精神と身体とは密接に係わり合っており、もしもどちらか一つのバランスが崩れてしまうと、もう片方もまるでドミノを倒す様に連鎖的に崩れてしまう。
つまりは肉体的苦痛は精神をも破壊し、精神的苦痛は肉体をも破壊するということだ。
では人はこの二つを"同時"に攻撃された時、一体どういう状況に陥ってしまうのか。
例えば、肉体を損傷すれば寝込み、精神を損傷すればふさぎ込む。
…だとらたぶん、恐らくだけど。この時人は、大き過ぎる痛みに耐え切れなくなって、考える事を放棄してしまうんじゃないだろうか。
それ以上傷付けられる事を恐れ、その現実から逃げ出したくなるんじゃないだろうか。
自分の殻に身を潜め、起こっている現実から目を逸らして夢想の中に居場所を探すのだ。
外に居て他人と接しているのは偽りの『わたし』。
脆弱な『私』を護る、薄っぺらくて、でもとても頑丈な殻。
その中からまるで他人事の様に世界を見て、全てを否定して生きるんだ。
…………まあ、これはあくまでも私のただの憶測で、決して何か明確な根拠に基づいているわけじゃない。少なくとも私がこれによく当てはまるというだけの話。
けど、ねぇ。お父さんお母さん。
約束の1つも守れない馬鹿な娘だけれど、私を許してね。
私はこの苦しみに耐えられなかったの。
壊れて行く身体を、心を、守ることができなかったの。
だからどうか、
許して。
「バカなこと言ってねぇでさっさと起きろアホ。お前のせいで台所何時までも片付かねぇだろうが」
バシ
「あいてっ!」
[ 1/12 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]