ばちっ!

と、目を開くとそこには三人の帽子男と白熊が一匹。


「ようベティ。ようやくお目覚めか?」


ああ、そうか。そうだった。


私トリップしたんだった。


「(帰れなかったのか・・・・・・)」


私が少しの絶望に表情を曇らせると、この海賊団の船長である男は、何を思ったのかニヤリと厭らしく笑い


「ククッ。今更後悔したところでもう遅い。素直に話せば、せめて苦しまねぇよう殺してやるよ・・・」




「結果話しても話さなくても殺されるってことですね。わあ。すてき。でも私全く関係ないから殺さないでほしいな。」


・・・って伝えたくても声が出ないから無理。


さて、どうしよう。


「どうした?答えねぇのか?」


船長は不適に笑っている。

その他は面倒臭そうにしている。


あの時(トリップ直後)は駄目だったけど、今は大分落ち着いた雰囲気だ。(と言ってもピリピリしてやな空気なのに変わりはないけど)

もしかしたら、今度はちゃんと私の話を聞いてくれるかも。


何もしないで殺される位なら、少しでも可能性があることにかけるほうがいい。




ちょっと怖いけど・・・。ええいっ当たって砕けろだ!



男達をキッと見据え、口をぱくぱくして喉を指差し腕でばってん。









よしっ、伝われ!私の思いっ!


















「・・・・・・・・・何してんの?こいつ」
「さあ?」
「俺達のこと馬鹿にしてんのか?」
「すいません・・・」
「「何で謝ってんの!?」」





な ぜ だ 。




これ見たらふつう誰でも、
『あ、もしかしてこいつ喋れないんじゃね?』
ってならない?


この真剣な顔をどう見たら馬鹿にしている様に見えるんだ?



空気のピリピリが強くなってきた。


とにかく伝わらなきゃ惨殺の私は、躍起になってわたわたと手を動かす。


おいコラそこの二人。

そんな哀れむような目で私を見るな。


ふと、ジェスチャー始めた辺りから無表情だった船長が、おもむろに私の側によってきた。


え、何怖い。



「・・・・・・おい」
「・・・・・・」


ざ、惨殺?されるのか?

もうダメなの?



恐怖にぎゅっと目を閉じる。























「お前、まさか声が出無いとか言うわけじゃ・・・・・・」



































「・・・・・・・・・・・・・・・!!?」



つ・・・、伝わった!!



がばりと顔を上げ、肯定の意を示すために慌ててぶんぶんと首を縦にふる。

ペンギンが何か行ってたけど聞こえなかった。

ポカーンとした表情の三人+一匹に書く物が欲しいと伝える。


すると、理解されるまで間はあったものの、紙とペンをもらい、何とかまともな会話をする準備が整った。

震える手で伝えたかった事を書く。



『私の名前は西荻神流です!ベティじゃないです!人違いです!!』


そしてその紙をどーんと奴らの前に突き出した。


何でか知らないけど皆アホっぽい顔してた。

船長さんはそれでもカッコイイとか反則じゃね?

いや、好みのタイプじゃないけど


「おれにそれを信じろと・・・?」

復活した船長にそう聞かれたのでコクコクと頷く。

「そ、そんなの信じられるわけないだろ。嘘かもしれないじゃんか!」
『貴方達が信じようが信じまいが私はベティなんて人じゃありません!てかベティ誰やねんって感じです。私は西荻神流、ベティ?何それ美味しいの?でファイナルアンサー?』
「ファイナルアンサー?」
『決定!みたいな意味です』
「そんなの・・・」
『イエスッファイナルアンサー!』
「「お前が答えるのかよ!!」」


素性の知れない私なんかに律儀にツッコむ二人をよそに、彼らの船長は冷静に私を分析していた様だ。

「お前がベティじゃないと言う証拠は?」
『むしろ私をベティだと思った根拠は何ですか?あと紙なくなります。』
「顔。もうちょっと頭使って書け」
『ありがとうございます。甘いですね。世界には3人自分のそっくりさんがいるんですよ。他に何か無いですか?ベティの特徴とか。』
「・・・お前ら言ってみろ」
「うざい」
「くさい」
「スタイルはいい」
『キタコレ。汗くさいのは否めないけど私うざくないしスタイルも良くない!』
「自分で言ったぞ」
「なんか哀れだな」
『うっさいですよ』

私の成長期はこれからなんだと睨みを効かせていると、横で獣がうんうん唸りだした。


「でも、良く見たらこいつ本当にベティじゃないのかも・・・臭くないし」
『良く言った白熊くん!さすが白熊!てかどうやって喋ってんの可愛いなオイ』
「キャプテンおれ褒められた」
「ちょっと黙ってろベポ」
「まぁ・・・確かにベティとはちょっと違う様な・・・」
「てか、何か小さくね?」
「「・・・・・・」」
「・・・お前、歳は?」
『18です』


そう答えると三人は何やら黙り込んでしまった。


し、視線刺さってる視線刺さってる。

そんな目で私を見るな。


『私何か変なこと言いましたか?』
「変なことっていうか・・・。そうか・・・。言われりゃ確かにガキだなこいつ」
「見た目ちっちゃいベティだな」

むっ

なんだそれは。
確かに身長と胸の発育は色々足りてない感が否めないけど、ガキ呼ばわりされるほどガキじゃないぞ私は。




何か色々不服だけど、でもこれで私の疑いは晴れたって訳か。

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