「京介!どうしよう、私ね…!」
「なにかあったのか?」
「赤ちゃんが、できたの!」
「…はあ」
今日はエイプリルフールだから、いつもなぜか主導権を握られてばかりいる彼氏に今日こそガツンと言ってやろうと思っていた。赤ちゃんができた、なんて言っただけでは確実に信じてもらえないだろうから、ちゃんと証拠の写真を用意したんだからね。死角ナシだよ!
「これ、見て」
「…っお腹、大きくなってる」
因みに画像は家庭科の授業で、妊婦さん体験をしたときのもの。7キロくらいあるやつを装着して、擬似のお腹を着けたたときに撮った写真だ。これがあれば、妊娠してなくてもお腹を膨らませられるし、京介を驚かせられると思った。でも彼は、携帯の画像と私とを見比べて、少しの間考えたような素振りをしていたけど、またいつものように腕を組んで、眉間を顰めてきた。
「お前…今、お腹大きくないだろ」
「…へっ?!」
「それにここまで膨らんでいたらさすがにオレでも気付く」
何故バレたし!それでも気付かれたから完全に作戦失敗だ。そう思っていると、京介の口から溜息が漏れた。
「エイプリルフールだからって、無理して嘘つくことないだろ」
「でも…!」
「別に名前はいつも通りでいい」
ふ、っと京介は笑った。彼の笑顔を見ることはあまりないから貴重なんだけどなんだかちょっと悔しい。むぅ、っと頬を膨らませていると。
「だったら今から本当に子作りでもするか?」
「き…京介?」
顔を見つめられてそんなことを言われるとか、かなり困る。京介のかっこいい顔が近付いてきて、恥ずかしいけど目を逸らせない。そんな状況におろおろしていたら、京介はまた笑って、冗談だ、なんて言ってきた。くそう、さっきまで恥じらっていた自分が恥ずかしいじゃん。
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