「名前ちゃん」
「んー、どうしたの?」


数学の授業中、ひたすら計算を解いていると隣の席の不動くんに声をかけられた。不動くんは見た目から怖そうとかよく言われてるけど、前にシャーペン落ちたのを拾ってくれたし、ジュースも奢ってくれたし、本当はいい人なんだと思う。そんな彼の方を見ると、机に頬杖して私の方をじっと見ていた。


「今日バレンタインなんだけど」
「あ、そうだったね」
「オレの分は?」
「私だれの分も作ってないしー」


バレンタインとかリア充さんたちが盛り上がるイベントじゃん。私にはまだ早いかなー。あ、友達にとかくらいは作ればよかった。なんて、考えていたら不動くんはムスっとしたような顔で、つまんねえと小さく呟いた。




「おい」
「ん?」
「お前、今日そのまま帰んなよ。教室残れ」


放課後、掃除当番に当たって、ほうきでゴミを掃いていたら、不動くんにそう言われた。今日は早く帰ってゲームしたかったんだけどなー。まぁいいや、と思って首を縦に振った。それから先生に今日残って勉強したいから教室開けておいてください、と適当に理由をつけて、さっさと掃除を終わらせてから教室に二人っきりなのを確認して、不動くんに近づいた。


「やっと終わったのかよ」
「うん。えっと、どうしたの」
「…名前ちゃんさあ」


心なしか、不動くんの顔が赤い気がする。熱があるのかなと思って、不動くんのおでこに手を伸ばそうとすると、バカじゃねえの、と折角伸ばした手を押し退けられた。


「コレ、やるよ」
「…、チョコ?」


不動くんから手渡されたのは、可愛らしくラッピングされた箱。ちょっと冷めたような彼がこれを持っているのが不思議で、フン、と顔を背ける不動くんとピンクのそれを交互に見る。もう一度不動くんに目を戻した時、腕を組んでまだ顔の赤い様子の彼が目に映り、なんかあたたかい気持ちになった。


「ありがとう」
「……」
「意外と可愛いもの好きなんだね?」
「っ、オレじゃなくて、こーゆーの、お前好きそうだったから」


私が好きそうだったから、だからこんな手の込んだ包装にしてくれたんだ。このリボンとか、買うとき不動くん恥ずかしかっただろうなと、想像しただけで顔がニヤける。


「おいっ笑うなよ!」
「ふふ、あははっ不動くんっかわいい!」
「なっ!」


耳まで赤くなっている彼を見てまた笑みが零れる。そんな私に頬を膨らませた不動くんがデコピンをかましてきた。


「いたっ!」
「なあ、ホワイトデーは3倍返しなんだぜえ?」
「……えーそう、なんだ…?」
「わかってるよなあ、名前ちゃーん?」


楽しみにしてる、そんな言葉とともに不動くんは悪魔のような笑みを浮かべて教室から出て行った。ホワイトデー…どうしようか。はぁ、と溜息をついて、不動くんから貰ったチョコレートを口に頬張ると、優しい味がした。こんなに美味しいチョコの3倍返しとか無理じゃん。半ば諦めながら、私は帰ることにした。



とゆーか、このチョコ不動くんが作ったんだよね。凄いなあ。今度教えてもらおーっと。







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少し早めのバレンタイン明王くんな話
ホワイトデーではうふふな展開にしたい

120210
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