私の彼氏はどうやらキスがお好きらしい。隙を見つけては顔を近づけてくる。
「…っ、ッ!」
「はぁ、ん…名前」
逸らせるだけ、顔を逸らしたけれど、明王は構わず口端を啄ばんでくる。一度捕まれば、長くて熱いちゅーをくれる。それは嬉しいけど。明王とのキスは嫌いじゃない。むしろ好きだ。
「んっや、め…」
ちゅ…ちゅ…
何度も軽いキスを落としてくれて、唇を舐められる。
「ん…っ、や、ぁ」
「は……もっと、口開けろよ」
喰らうように上唇、そして下唇を奪われると、こっちも呼吸が苦しくなる。そう、彼のキスは優しいけど獣みたいに激しいキスでもある。だから息が持たない。
「ん、んっ…ぁ」
薄らと隙間が出来たのを見計らって、明王は舌を滑り込ませてきた。
「ッ!は、ん…っ」
明王の舌は私のに絡み付いて、奥まで絡めててくる。
「あ、ふっ…ん、んむ、ぅ!」
角度を変えて何度も何度も舌を貪られると、唾液がぴちゃぴちゃ、と音を立てた。歯列をなぞって、歯茎まで丹念に、ねっとりと舐められてしまう。
「名前…んはっ」
「ん、…う、ふ、ぁ…っ」
ゆっくりと唇同士が離れると、名残惜しそうに銀の糸が二人を繋いだ。
「唇、赤く腫れてんぞ」
「もう!明王のせいだよ」
「…可愛い…」
「え……!」
「っオレはもう、帰るからな!」
「待ってよ明王!」
「……」
「もう一回キスしてもいいから待って」
「……!」
そういうと、明王はくるっと私に向き直り頭に手を置いて撫でてくれる。
「んー、目ぇ瞑れよ」
「ふふ、単純だね」
「うっせえ」
濡れた唇を指でなぞり、明王はうっとりと私の名前を呟いて、もう一度あのキスをくれた。
120220