モノクローム


ウインディの背から降りると腹の辺りを軽く叩き、ヒナタは帰ろうと言った。
罪悪感とは中々拭えないものだ。況してやそれが自分が言ったことから引き起こされたとなれば、抱えるモノも大きくなるだろう。
喪ったモノが大切であればあるほど、自己嫌悪と良心の呵責に苛まれるのだ。
ウインディもキュウコンも結局はお互い自分自身が許せないでいるだけだったから、再び話すことが出来た。
埋まらぬ溝はあるが。

「…お前も馬鹿だね」

粗忽な手つきで鼻をかくとウインディは可笑しそうに笑った。
自分は彼らの気持ちを考えることは出来る。だが彼らのようにそこまでして助けたいと思うような人間はいなかった。
一緒にいて心地よい人間はいた。だが結局はそれまでで、それ以上仲良くなろうとは思えずに現状を維持する。
浅く広くを前提にした方が生きやすい。そう思っていた。
けれどウインディを見ていると、親友を越えた繋がりが羨ましく思える。
嫉妬よりも淡い色の感情は羨望か、情緒か。
ふとそこまで考えてヒナタは、はっとしたように目を軽く見開く。
自分の考えにのめり込んで、危うくウインディのことを置いていく所だった。
これではいけないと内心自分を叱咤すると、未だに項垂れているウインディを見る。
様子からして彼はまだ立ち直っていないようだ。

「(……これは慰めた方がいいのか)」

元来口下手なヒナタに重い話をした者を慰める度胸はない。
下手をすれば余計に相手の傷を抉りかねないことに、進んで行く勇気はなかった。
何よりヒナタは痛みを感じたことのない人間が、幾ら相手を慰めらようとも、意味などないと思っている。

自分はウインディの罪悪感と苦しみを知らない。
そんな人間が慰めることなど出来ない。

居心地の悪さを感じていると、不意に柔らかい感触が頬に感じられた。
驚きに目を見開くと、橙色と黒の色が擦り寄っている。嗚呼彼が慰めてくれているのかと毛並みの色で誰か判断して、頭を撫で返した。

     

back
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -