つぶれろついえろ




一度夢が出来たなら、求め続けて歩いていく。
一度膝を着いてしまったら、もう前には進めない。
一度俯いてしまったら、もう前は見られない。
一度泣いてしまったら、心が軋んで痛くなる。
一度沈んでしまったら、空気が無くなって萎むだけ。
一度知ってしまったら、知らなかったとは言えなくなる。
一度越えてしまったら、もう前には戻れない。
一度走ってしまったら、足が無くなるまで止まれない。
一度口にしてしまったら、取り消すことは出来ない。
一度世界を見限ったら、心は全てを拒絶する。
一度失ってしまったら、残るものは塵と同じ。
嗚呼でもぜんぶ失敗した。

一度壊れてしまったから、またやり直そうと手を加えた。
一度崩れてしまったから、接着剤でくっつけた。
一度粉々にしてしまったから、バケツの中に放り込んだ。
一度潰れてしまったから、滴るものも構わず棄てた。
一度変わってしまったから、また変えようと繰り返した。
一度願ってしまったから、願いが今も消えずにある。
一度望んでしまったから、折れた願いを握り締めている。
一度掻き抱いてしまったから、今も手放せずに過去を抱きしめている。
嗚呼だからわたしはいまをいきる。

綺麗な幻想、綺麗事、綺麗な希望、絵空事、綺麗な思い出、他人事。
三文芝居に茶番劇。紙の上の人形劇を誰が喜ぶというのだろうか。
いっそ潰れてしまえと口にすれど、世界は停滞したままだった。






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