心ない人の声が自分以外いない空間に反響していき、突き刺さる視線は嘆き入るように責めたてるように自分に向けられていた。

何故だ。嗚呼失敗だ。あと一つだけなのに。捨てなければ。また作りなおそう。嗚呼今回は残念だった。
聞くのも疎ましい言葉だった。けれどそう言われるのは仕方ないのかもしれない。
よくは分からないが自分は生まれ落ちた際に何かとんでもない失敗をしてしまったようだ。
誰だって失敗されては困る。自分も失敗することは避けたい。ならば仕方ない。
理由なく捨てられるのは癪に障るが、理由があるならば納得しなければならないだろう。冷たくも温かくもないその言葉たちはその事実をありありと突き付けているのだから。

どうして間違えて生まれてきたのかと。

生まれた瞬間に突き付けられた事実は当然のこと。受け入れる以外にはどうしようもない。けれどどうしてか知らないが、響く言葉達が響く度に胸の奥に重く圧し掛かった。

◆◆◆

サワサワと葉が擦れ合う音がする。次に感じたのは土と草が絡み合う匂い。
柔らかく鼓膜と鼻を刺激するモノが夢現にあった意識を浮上させていく。
ゆるゆると閉じていた目蓋を押し上げると、最初に飛び込んできたのは綺麗な緑色。
起きたばかりでぼやける視界に何度か瞬きをして直すと背筋を伸ばして眠気を飛ばす。
起きた頭でもう一度視線を向ければそれは若々しい草だったことがわかった。つい、とそのまま視線を横にやる。
青々と茂る木の葉とそれを生やす太い木の幹の内の一本が目に入った。燦々と降り注ぐ陽光を得ようと伸びていったのか他の木より真っ直ぐ成長している。
その木の根元には寝袋に包まれて健やかに眠る一人の人間がいた。
寝袋からはみ出た黒髪の頭が動かないことからまだ起きてはいないらしい。
少し待ってみても起きる気配はなかった。何故かそのことが無性に気になり、なるべく音を立てないように近づく。
目蓋を閉じたまま静かに息をするその様は間違えば死んでいるように見えた。







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