雑談エブリデー




風の噂で聞いたのだが、先日とある資産家が亡くなったようだ。女性ながら中々の遣り手と評判だった彼女は人望厚く人当たりも良かったらしい。寄付金やボランティアなども積極的に参加していた彼女の死を悼む人は多く、通夜には千人を超す人が訪れたとか。
今日来ていた妙齢の客が言ったことをそっくりそのまま告げると玄姫は摘み取ったばかりの一輪の花を指先でくるくると回し興味が無さそうに相槌を打つ。
やがて花を弄るのにも飽きたのか、一輪挿し用の細い花瓶を持ってくるとその中に水を入れ花を生けた。
「人望かぁ」
「信じがたい、か?」
「まぁね」
何となく玄姫の言いそうなことがわかって先回りして言うと大した反応も返さず、彼は縁側部分に寝転ぶ。
「これは偏見だけどそういう人種って裏で一際悪どいことやってそうだしね」
「んなこと言ったら善人に見える奴ら全員が悪どいことやってるように見えるってことじゃねぇか」
「はは。確かにー」
温かな陽射しを浴びながら玄姫は小さく伸びをした。
「ま。そう思ってても口に出さなきゃ上手く生きてけるよ」
目の前で眠たそうに欠伸をするこの男こそがその対象に見えるとは口が裂けても言えなかった。


どうせこの世は見た目(外面)がよければ何でもいいんだ。

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