ビビリな彼と彼をど突きまくる怖いヌオー


フスベシティに存在するフスベジムはドラゴンタイプで構成されたジョウトで一番強いジムとされている。相性的にドラゴンタイプはドラゴンと氷以外に目立ったダメージを与えることが出来ない。
だがつい数分前にオレはその強いジムリーダーに勝つことが出来た。しかも手持ちのポケモン一体だけでだ。

「世の中不思議なことあるもんだなぁ…ぐべっ」

ぼけーとした表情でそんなことを呟けば凄まじい勢いで頭を殴られた。ドゴッという音がしたが果たして首の骨は平気だろうか。
さすさすと殴られた頭と首を撫でながら横を見れば、のんびりとした顔をしたヌオーが何故か右腕を上げた状態でスタンバイしている。ヌオーの背後から立ち上る黒い何かが見えることから相当怒っているらしい。
よく見れば振り上げた右腕は光を纏っている。技を発動する前段階だ。
そういえばこの間は何故か近距離で破壊光線されて死ぬ気でイナバウワーしたな。やばいこのままじゃ死ぬ。

「ちょ、ちょっとどうしたっ?オレ何もしてないよねっ!?」

慌てて両手で待ったを掛けるとヌオーに口から土泥を吐かれた。何故だ。
ハンカチでごしごし吹っ掛けられた泥を拭いているとポーカーフェイスのまま鼻で笑われる。
一体何が悪かったのかわからず首を傾げながら、よっこいせと腰を上げればジムに行く寸前まで居た洞窟が目に入った。

思えばこの街に来て一年。勢いに乗ってジムに挑むもこてんぱんに熨されたオレはあんまりな対戦に傷心を癒すためにこの洞窟に入ったのだ。正直あの気持ちを抱えたままフスベシティに居たくなかったという気持ちが大きかった。そう思わせられるほどオレの対戦はボロボロだったのだ。

ちなみに暗闇の洞窟と呼ばれる洞窟は修行をする人がそれなりにいて孤独とかは全く感じなかったが、その代り引っ切り無しに出会うポケモンにヘトヘトにさせられた。
食糧が尽きれば仕方なしにチョウジタウンまで飛んで買いに行ったが、基本は暗闇の洞窟と45番道路を行き来する。
暗闇の洞穴と45番道路ではゴローンやドンファン、イシツブテなどを相手に戦うことを繰り返す日々。正直もうこのまま暮らそうかと思ったくらい意気消沈していた。

だが一年ほど経ったある日、ずっと先頭で戦わせていたパートナーであるヌオーにギガインパクトを食らわせられて気絶させられたのだ。
そして気付けばフスベジムの目の前に居り、どくどくを構えていたヌオーに脅され泣く泣くフスベシティの門を叩いたのである。

最初こそヌオーに抵抗したものの、容赦の欠片もなく岩砕きをされたのでパートナーに止めを刺される前にフスベシティに行くしかなかったのだ。多分それでも抵抗したら間違いなくどくどくをされてた。

そんなこんなで負ける気持ちでどんどん進めばあれよあれよという間にヌオーはジムトレーナーのドラゴンポケモンを倒していった。
最終的にはジムリーダーのポケモンを背負い投げの要領で地面に叩きつけてあっという間にオレはフスベのバッチを手にしていたのである。

その時に見たヌオーの蔑むようなポーカーフェイスは忘れられない。
マジで怖かった。

チラッとヌオーを見れば腕を組んでこっちを見ている。

「で、あのヌオーさんはどうして怒っていらっしゃるんです?」

恐る恐る尋ねればストーンエッジした上に八つ当たりをされた。酷い。
だがそれももう慣れた。

悲しきかな。ヌオーがウパーだった頃から彼はこんな態度しか自分にはしてくれない。
理由はわからないが、多分野生のプライドやらなんやらとかそんなところだろう。取り敢えず彼がオレにいい思いを抱いていないことは確かだ。

オレ自身、ウパーだった彼を捕まえるためにちょっと、いや少し…いや大分色々やってしまった。
あれは失敗だったかなぁと思わないでもないが、やってしまったことはもう取り返しがつかない。

今のオレに出来ることがあるとすれば責任を持って彼を強くして最後の最期まで見捨てないことくらいだろう。
攻撃されるのは勘弁してほしいが、それで周りに被害が及ばないのであればまだ安全なのかもしれない。嫌だけど。

…嫌だけど、仕方ない。

それが今のオレが差し出せる精一杯の誠意なのだから。


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ヌオーに蔑まれるトレーナー。
ちなみに男主。ヌオーも男。
恋愛要素はないです。



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