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自分以外の誰かが幸せであればいい。そんな綺麗事は好きではない。赤の他人の幸せを願える程広い心は持っていないのだ。

その代わりに願うことはごくごく平凡で何の面白みもないことだ。
自分が大切に思う人が幸せであればいい。人が心から優しく笑っている様子が好きだから、喜び楽しんでいる姿が好きだから、そうであればいいと思った。
出来ればその中に自分の存在が僅かにでもあって欲しいけれど、その願いはおこがましいかもしれない。

自分はこの世界には異端な存在だから、若しかしたら願うこと自体罪になるのだろうか。
罪になるのならばそれにはどんな罰が下るのだろう。

自分が傷つくのはいい。けれど死にたくはない。
自分にとって内側の人間が傷つくのはいい。けれど自分の内側の人間が消えるのは嫌だ。

苦痛が伴うのが罰なのは分かっている。それが自分の罪になるのなら甘んじて受けよう。
そう覚悟を決めたとしても、予想される苦痛に恐怖してしまう体が何とも情けないものだ。

知らぬうちに体が冷え切ってしまうような恐怖が、不安が、恐ろしくて堪らない。
動かぬ自分の姿を想像しただけで底なし沼に落ちていくようなじんわりとした悪寒が押し寄せる。だから死ぬことは嫌だ。

だけど自分の内側の人間が消えるよりはまだいい。置いて行かれるよりはずっと心が楽だ。

失うのは耐えられない。
だから多分…内側の人間と自分が秤に掛けられた時は私は迷わず自分を捧げるのだろう。

優しさなどではない。これは単なる偽善。自己満足と自己欺瞞であり最大の自己中心的な考え。そして最低の裏切り行為だ。
自己犠牲なんて綺麗なものではない。ただ自分の為だけに自己保身の為に選択するのだ。

どんなに罵られたとしてもそう思わざる負えない。臆病者である自分は一度手に入れられたモノを、自分を受け入れられてくれたモノを失うことが恐ろしくて堪らない。


だからもし私が死ぬ時は涙など流さないでください。こんな人間の為に流す涙などあってはいけない。私は惜しまれるような人間ではないから。

…私は他者を思い遣れない臆病な愚か者。

そんな私にはどんな罰が下るのだろう。


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