「俺、一十木音也!一年間よろしく!」
そう言って差し出された手をトキヤは握り返す事が出来なかった。
「(か、可愛い…!)」
健康的な肌の色にハツラツとした明るい声。
そして彼自身のイメージカラーぴったりと赤い髪。
なによりもトキヤの目を奪ったのはくりくりとした瞳。
「えっと…君は?」
「…っ。一之瀬トキヤです。よろしく」
はっとして名前を言う。
『うん、よろしく!』とニカッ、と笑った音也にトキヤは再び胸を打たれた。
今までかつてこんなに愛らしい人間に会った事があるだろうか。
「(いや、ない。共演してきたアイドルも女優も、こんなに胸を熱くする事は無かった)」
ジリジリと胸を焦がすこれは一体……
「一之瀬はーって、これから同室なんだし、トキヤで良いよね」
「え、あ、はい」
「俺の事は音也って呼んでよ!」
「……音也」
「なに?トキヤ」
トキヤ
…トキヤ
……トキヤ
トキヤの脳内で、自分を呼ぶ音也の声が再生される。
そしてその声だけで心が満たされるのを感じた。
「(ああ音也)…好きです結婚しましょう」
「ええ?!」
一目惚れの話
((どうしよう、ドキドキしてる))(「顔、真っ赤ですよ(かわいいかわいいかわいい!)」)