8 急展開クラスルーム!



 結局、デュースの方も犯人特定への有効な情報を手に入れられなかったようだった。サイエンス部は部員が多く、一人一人が何をやっているかは詳しく把握していないらしい。それに加えて試験が近づくと皆大急ぎで実験をまとめだすため、ここ数日は誰が何をやっているかなんて特にわからなかったそうだ。あのトレイ先輩がわからないというのだからお手上げだ。何も前進しなかったな、と頭を抱えて教室に向かう。
「あれ、欠席者増えてないな」
「確かに」
「犯人、飽きちまったのか?」
 これ以上被害が拡大しないのならひとまず安心だ。一時限目は占星術入門。事前に机の上に置いてあるプリントを見る限り、この授業も自習らしい。星座の名前とその象徴についての書き取りのようだ。
「はい皆さん、今日も自習ですよ」
 自習監督が来なかったらいいのになあ、なんて思っていた矢先。しゅたっと教壇へ降り立ったのは学園長。天井のあるこの部屋でやるパフォーマンスなのかはさておくとして。
「いいんですか学園長、ここにいて」
「仕方ないでしょう、私以外は取り込み中なんですから」
 それは学園長が暇ということでは……というツッコミは呑み込んでおく。
「まあずっとここにいるわけではありませんが……皆さんはまだ一年生。監督がいないと不安があるだろうという配慮ですよ。私、優し」
「学園長!」
 学園長のいつものセリフを遮るようにバン!と開け放たれたドアの向こうにはディアソムニア寮の生徒が立っている。あれは……シルバー先輩だ。時折中庭で眠っているのを見かけることがある。声を張り上げるタイプでもないだろう、というのはこっちの勝手な妄想だが、余程の一大事らしい。
「すみません。至急校内放送をお願いします。ディアソムニア寮には近づかぬようにと……」
「何があったんです」
「…………一年のファンデルスが、暴走を」
 先輩の声は静かなのによく通る。知り合いの名前を聞き逃すはずもなく、がたん、とグリムと一緒に立ち上がった。
「レト」
「シルバー!オレ様たちも連れてくんだゾ!」
 隣のデュースはこちらの様子に驚きを隠せないようだ。確かに彼はレトとは面識があまり無かったから。シルバー先輩はこちらへ、肯定とも否定ともつかない視線を寄越していた。

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