7 探索クルー!



「探すと言ってもなあ」
 魔法薬が原因ということしかわかっていない以上、身動きが取れない。リドル先輩の推測だから間違ってはいないだろうけれど、百パーセントか、と言われれば微妙なところだ。
「とりあえず、サイエンス部かな」
 リドル先輩でもピンと来ない魔法薬ならば、教科書に載っていないものということ。外部から入手するには危険が伴うし、こんな危険物が流通しているはずがない。誰かが調合したはず……となると、一番に調べるべきはサイエンス部周辺だろう。科学と言いつつもなんでもアリの部活だし、顧問は魔法薬学担当のクルーウェル先生。魔法薬学部がないからとサイエンス部に所属している生徒も少なくないと聞いた。
「サイエンス部というと……トレイ先輩だな」
 自習になった魔法史の授業、小声で喋っていても監督役のルチウスはこちらを叱ることはない。いや、もしかしたら後から報告されてしまうのかもしれないが、それはひとまずおいておく。先生はきっと、この集団睡眠事件の始末に追われているはずだ。犯人探しというよりは生徒を目覚めさせる方法の模索。ジャックのクラスは昨日の午後から魔法薬学の授業が自習だったと言うし、クルーウェル先生は解毒剤の調合でも行っているのだろう。
「グリムは何かわかんない?薬の匂いとか、そういうの」
「わかってたら今話し合ってないんだゾ」
「そうだよな……」
 一人、思い当たる生徒がいないわけではない。けれど彼は、こんな無差別なことをする人ではない。レト・ファンデルス。何度か前科があるというのは学園長が言っていたが、どれも被害が出たから発覚したのではないのだ。彼が咎められたのは、魔法薬の出来が良すぎて評判になってしまったから。例えば飲んで念じるだけで髪色を自由自在に変更できる魔法薬とか、一時的に声色を変えられる魔法薬。実用的というよりはその面白さと手軽さで度々人気になって学園側にバレる。その繰り返しだ。だから今回のような、眠り続けるだけという効果は彼らしくないと思った。そもそも彼は、ちゃんと事前に効能と材料を説明して了承を取ってから魔法薬を試している。こんな大騒ぎになるようなことをするとは思えなかった。だってあんな、優しい人だ。
「一人気になる子がいるから、その子に話を聞いてみる」
「わかった。じゃあこっちはトレイ先輩に話を聞こう」
 二人と一匹で拳をこつんと突き合わせた。にゃあ、と鳴いたルチウスがこちらを見ている。ううん、これはやっぱり、課題レポートが課されてしまうかもしれない。
 
 ***
 
「レト?いないよ。例の眠り姫事件じゃないのか?」
「ああ、セベクもいないしな」
 D組。付き合いのある生徒は少ないが、存外皆好意的に話を聞いてくれている。まあこちらが入学式でしこたま問題を起こしたり、どの寮にも属さないなんていう特例のせいで有名人なせいもあるのだろうけれど。
「なんか被害者に共通点無いのか?」
 グリムの声に、二人の生徒が顔を見合わせる。確かにいきなりそこまで辿り着ければ僥倖だけれど。
「俺たちのクラス、特に被害者が多いんだ」
「D組に?」
 確かに教室を覗き込めば、随分と人数が少ない。欠席者の多いA組の、更に半分くらいしかいなかった。これではまるで授業というよりも、ごく小さいクラブ活動のようだ。
「それくらいしかわかんなくてさ。俺の同室の奴も今朝目が覚めなかった。でも全然、誰かに何かをされたようには見えなかったんだ」
「そっか……」
「悪いな、俺たちも犯人を探ってるんだがこれくらいしか」
「このグリム様が見事に解決してみせるから安心して良いぞ!」
「ありがとう」
 ぴょこん、と飛び跳ねるグリム。レトも被害者らしいとわかったのはかなりの収穫。あとは、トレイ先輩へ聞きに行ったデュースが頼みの綱だ。

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