1-8



「っとに、次から、次へと!」

 流石の俺も参っちまうぜ、なんて軽口を叩いてみる。が、当然のように状況は好転しない。何故か凶暴化し、こちらを攻撃対象と見ているカローン兵たちは次から次へ湧いてくる。中身はお留守のようだし非常時という免罪符も掲げて片っ端から動けないように破壊していく。まあ破壊、と言ってもあくまで脚部を潰していくだけ。対魔の鎧を纏っていたとて、単純なパワーで殴られればいつか限界が来る。攻撃魔法は効かないが、身体強化魔法で筋力を強化すれば問題なし、というやつだ。それでも限界はあるが。ああクソ、都合良く変身薬の効果が切れてくれればこんな奴らハサミでばつん! なのになあ! 愛おしきかな我が外骨格。畜生、殴りすぎて腕もめちゃくちゃ痛い!

 もちろん、エペルのユニーク魔法ほど完全に動きを止められるわけじゃない。ただ遅くするだけ。それでもいくらかマシなレベルだが、贅沢言ってられる状況でもない。

「せ、先輩! 浮いて追いかけてきます!」

「マジじゃん! どんなホラゲーだよ!」

 監督生の言葉に振り返れば、下半身の無い鎧が浮遊してこちらを追尾している。幽霊城かここは!

「あんま使いたかねえんだけどなァ!」

 エペルのユニーク魔法だけを当てにするわけにもいかない。さっき覚醒したばかりだし、魔力の消費も推測できない。この状態で魔力切れになればこの場の全員万事休す。そんなことは避けたいが……俺のユニーク魔法もそれなりに魔力消費が多い。

「詠唱省略! 燦めく十脚グリーディ・シャイニー!」

 カローン兵の握っていた銃を取り上げる。助かった、あれは対魔素材じゃないらしい、その上金属だ。バキリ。ライフルのような形をした魔導武器を湾曲させ、カローン兵を壁に固定する。流石にここまですれば追いかけちゃこないだろ。っていうか頼むから動くな。

「最初からそれ使ってくださいよ!」

「バカスカ使えねえの! 奥の手!」

 ギャグ漫画みたいなやり取りをしながらルークの後を追いかける。

「見えた! この先の管制室にヴィルたちもいる!」

 前方でエペルの魔法が発動している。棺に閉じ込めるなんて随分ロマンチックだよな。これ今抱く感想じゃねえな。まあ良い。あいつらに出会えたら百人力だ。会いたくねえような奴らばかりだが、寮長とか副寮長なだけあって才能の塊だし。

 それなのに、胸騒ぎがする。この非常事態にイデアやオルトが関わっているんじゃないか。最悪の状況ばかり想像してしまう。ラスボスなんてジョークの上だけにしてくれよ。

 深呼吸。

 エペルの魔法を逃れた幸運なカローン兵を壁に固定していく。昆虫標本式じゃないだけ感謝してほしい。管制室へ踏み込んだ。

prev next

back
しおりを挟む
TOP



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -