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 何考えてるんだよ。

 ずるりと崩れ落ちる同級生に疑問符を通り越して三点リーダーだけを浮かべた。

 嘆きの島への外部からの侵入なんて滅多にない。島の歴史に残るレベルだ。そんな大それたことをやっておいて、スキンケア用品を届けにきただの友人を取り返しに来ただの……素直に数日待てば五体満足でまた「普通」の学園生活に戻れるってのに。これだから問題児どもは。

 カローン兵に担がれる男に目をやる。こいつが一番理解に困る。一応は友人……ってポジションだ。多分。カヴュは暑苦しい王道少年漫画みたいにこっちを「ダチ」だのと呼んでくれるのでその判断で間違っていない、と思う。お人好しで、自惚れ屋で、隙あらば歌ってる、ステレオタイプな南国の象徴みたいな奴。それでいて割とアングラ趣味にも理解がある。オタクに優しいギャルとか一部からは呼ばれてる(男子校の寮生活、悲しい男子高校生は気が狂ってしまったんだろう)。そんな奴が、どうしてこんなところまで来ちゃうんだよ。

 どうして。

 ここに来られた以上、彼にも河を通ってもらわなければならない。まあでも正しいような気がする。カヴュみたいなギラギラした奴は僕なんかに構うべきじゃない。少なくとも「イデア」のために命を賭けなくたっていい。これを機会にもう全部忘れてもらったっていいかな、とまで思った。思ったのに、どうしてか僅かに後ろ髪引かれる思いがある。僕の髪にご執心なのは僕じゃなくてカヴュの方だろなんてツッコミはさておき。これが人間の弱みなんだろうな。苦しむのがわかっているのに捨ておけない。それもこれも、彼のせいにしてしまいたい。殴り掛かるような言動をしておいてハグして、挙句小声で謝罪を口にするような同級生のせいだ。

「……オルト、お願い」

「はーい!」

 指示を受けたオルトは、問題児たちをヘカーテ地区の研修施設に案内してくれるはずだ。そこに彼らを入れて、僕は被験体の分析に戻る。そして二日もしないうちに元通り。それで良いのだ。

 ふう、と息を吐く。

 そもそもいきなりハグしてくるって何?

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