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「いやー、マジですごかったぜエペル!」
けらけら笑いながらルークとエペルのやりとりを眺める。とある島、焚き火を囲んで携帯食料を齧る。こんなことなら何か食ってくりゃ良かったな、などと。
箒で追いかけるのはわかっていたからいいものの、まさかそのままルークに攻撃魔法を仕掛けるとは思うまい。しかも監督生と二ケツした状態で、炎とか。鏡舎で会話した時にうっすら感じていたが、こいつはかなり芯がある。変な言い方をすれば頑固というか。このナイトレイブンカレッジでやっていけるのかと心配になるくらいの気の弱そうな見た目とは裏腹、一番激情させたらヤバいタイプだ。
「君も手助けしたんだろう? 南国の吟遊詩人」
「ちょっとだけな」
吟遊詩人、なんて大層なあだ名をルークには付けられているが、正直これは彼自身の方がお似合いだと思う。愛の狩人の方が彼にぴったりなのはわかるけどさ。ジョブ的には吟遊詩人ってより武闘家とか遊び人の方が良い……ってのは完全に余計な話。そういや同じ学年に騎士もいるしバランス良いのか、そう考えると。
「つっても身体強化魔法かけてやっただけだぜ」
先に箒で飛び去ってしまったルークを追いかけるべく、まず全員の視覚を強化。それでルークを目視で探す、という作戦だった。幸い、賢者の島周辺はあまり航空機が通らないし、鳥とポムフィオーレの寮服の見分けなら簡単につくし。そして上空を長時間飛行しても大丈夫なように防御と風よけ魔法の重ねがけ。これはあくまでお守りレベル、「低体温症で死ぬことはなくなる」程度のものだったけど。
「ふふ。でもまさか、君まで着いてくるとは思っていなかったよ」
「……俺も居ても立ってもいられなくなっただけだ」
少し考えてさらりと言う。イデアに会えば何をしたかったかわかるだろう、なんて見切り発車でここにいる。にしても学園に戻ったら馬鹿ほど怒られるんだろうな、勤勉のイグニハイドが聞いて呆れるぜ。ま、別に自分のことを勤勉なんて思ったことそんなにないけど。褒め言葉ならいくらでも受け取るから甘んじてるだけでさ。
「パーティは多い方がいいだろ、狩人さんよ」
「そうとも! 君がいると心強いよ」
朗らかに言うルーク。これからよくわからない場所に乗り込むんだ、と握手でもって条約締結。ルークは学園きっての変人扱いされてることが多いが、めちゃくちゃ優秀なのでそのおこぼれに預かるのはこっちの方だし。よし。いける。
「これでイグニハイド寮も連帯責任ですねー」
そんな監督生の何気ない呟きは聞かなかったことにしたいが!
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