ディープ・ケイブ・アドベンチャー! 13



13 エンドロールの後の話



「探したぜ監督生ちゃん! っとデュースにグリムもいるな。ちょうど良い」

 常夜の島でのバカンス……もとい探検からしばらくしたある日。食堂で昼食を食べ始めたくらいのタイミングでカヴュ先輩からそう声をかけられた。

「先輩、どうしたんですか?」

「あ! オレ様のおかげであの島が有名になったお礼だな!?」

「そんなすぐ有名になるわけないだろ……」

 デュースは冷静にそう突っ込むが、グリムはお礼と信じきっているみたいだ。まあ、自分もそれは無いと思うけど。

「あ、観光業はまずまずらしいぜ。予約がいつもより多いとか。つっても島の公式アカウントがマジッターでバズったからっぽいが」

 先輩のスマホにはそのアカウントの呟きらしきものが表示されている。綺麗な風景写真とウィットに富んだ文章……どこをどう見ても自分達は関係なさそうだ。

「でも良かったです」

「お前らが来てくれて良かったって島民もいるんだぜ? 観光客らしい観光客って珍しいからよ」

 確か先輩は「常夜の島は物好きしか来ない」みたいなことも言ってたし、自分達のようなバカンスを全力で楽しむ団体なんてむしろレアだったんだろう。

「で、お礼じゃねえなら何の用なんだゾ?」

 腰に手を当てて「えらそう」を体現したポーズをするグリムの手に、カヴュ先輩は何かを握らせる。

「お前らにも。形変えたかったら俺んとこ来いよ。ストラップとかにもできるからよ」

 何だろう、と見てみれば……バングルのようだ。銀色の細身のそれは、言っちゃなんだけどありふれたデザインで、かつセンスが光る。中心にはきらきらした虹色の宝石も埋め込まれていて

「っせ、先輩これ!」

 どう見たってオパールだ。いやよく似た安い別のものって可能性もあるけどこの文脈でカヴュ先輩が渡してくる可能性があるとすればオパールしかない。オパールしかない、なんて言い切りたくもないのだけれど……だってあれはそのまま内緒にしておくって約束だったじゃん!

「おっと。ブツにはノータッチだぜ。あそこに転がってた貝殻がキラキラしてたから拾ってたんだわ。んで、外でよく見りゃ思った以上の代物じゃねえの!」

「つまり?」

「口止め料」

 口角を上げてそう言った先輩はグリムの頭を撫でている。グリムに渡されたのは同じような石がついているチャーム。首元のリボンにつけられるデザインになっているらしい。一方でデュースは自分と同じバングルだけど、少しこっちよりも太めなゴツいデザイン。あ、先輩のユニーク魔法で仕立て上げたんだろうか。なんとも便利な。

「あ、ありがとうございます!」

 立ち上がって礼を言うデュースに倣って、こちらも礼を言う。口止め料っていう言葉は怖いけど、なんだか秘密の共有が形になったみたいでかなり心が躍る。ジャックやイデア先輩、オルトも貰ったんだろうか。みんなどんなデザインなんだろう。

「あ、イデアがこの前の写真持ってるから駄菓子でも持って押しかけてやってくれ」

「わかりました」

 ま、少しならポケットに入れてもわかんなかったろ? なんて言って去っていくカヴュ先輩。早速バングルを腕につけてみる。ちょっと不似合いかもしれないけど、思わず顔がにやけてしまう。

「……お前ら何やってきたの……?」

 カレーライスをスプーンに掬ったまま固まっていたエースは顔を引き攣らせてそんなことを言う。二人と一匹、そんな彼と互いの顔を見比べて、にやりと笑う。そしてこう言うのだ。

「「「秘密!」」」

 

 ディープ・ケイブ・アドベンチャー! 終

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