ディープ・ケイブ・アドベンチャー! 11



11 「ダンジョン最下層」へ進みますか?▽

 

「……夜?」

 思わずそう口に出た。

 扉の先は広い空間だった。真っ暗な中見上げると、小さな粒がちかちかと光っているのだ。まるで星空のように。

「いや……何かが光ってる、のか……?」

「オレ様が確かめてくるんだゾ!」

「あっグリム!」

 グリムは止める暇もなく、たたた、と壁面から天井へと駆け上がっていってしまった。

「照明魔法使って良いと思うか、これ?」

「こんなこともあろうかと小型浮遊照明フレア持って来てるんですな拙者! ぐう有能では?」

 イデア先輩はそう言って、小型のボールのようなものを空中へ投げ上げる。それは浮遊しながら、まるでこの洞窟という部屋に電気をつけたみたいに空間を明るく照らした。自分達が今いるのは、ドームのようになっている、少し広い空間らしい。けれど財宝の山、なんてありがちなものはどこをどう見ても無いようだ。

「おーいグリム! お前も光ってるぞ!」

 デュースの指摘にはるか高くに逆さまに立っているグリムを見上げる。確かにグリムの手足が、天井と同じように光っている。

「なんかコケ? みたいなやつなんだゾ!」

「うーん、データベースには無いんだけどヒカリゴケの一種だね。新種の可能性は十分にあると思うよ!」

 オルトの声に、宝石じゃないのかーと面白くなさそうに素早く降りてきたグリム。しかし、光る手足に興味津々のようだ。ちょっと嬉しそうに踊ってるみたいな足踏みをしているし。

「何も無さそうだなこれ……」

 カヴュ先輩はそう呟く。イデア先輩の照明に加え、手持ちの懐中電灯で隅々まで照らしているが、確かに何も見当たらない。特に金銀財宝なんてキラキラしたものはもちろん、器や船なんかの歴史的価値がありそうなものも全く。ただの広い空間なのである。

「この新種のヒカリゴケ天然プラネタリウムがお宝っていうベタな展開だったりする? あー、なんか期待して損したでござる。いや、新種だったら確実にお宝だな……サンプル持ち帰……っても拙者専門じゃないしそもそも防疫的にアウトすぎる……」

「まあ昔は何かあったのかもしれないぜ。技術の発展で貯蔵庫として使う理由がなくなったから中身どこかに移したとかさ。あ、甲殻類の亜人デミならイソギンチャクの毒効かねえな。ダンジョンじゃなくて遺構ってオチか」

 先輩二人がそんな考察を繰り広げるのを聞きながら、それでも何かないかと懐中電灯で周囲を照らす。けれど小石や貝殻が落ちている程度で、コインの一枚も無い。他のメンバーも同じような行動に出ているけれど、何も見つかりそうにない。

「ジャック、どうしたの?」

 ふと、ある一点で立ち止まって地面を見つめている彼に声をかける。何か気になるものでも見つけたんだろうか。それともやっぱり扉を開けたことに後ろめたさがあったり?

「これ、骨……だよな」

「骨?」

 彼の隣にしゃがみ込んで地面を見る。確かに、何かの骨のようなものが埋まっている。ちょうど化石の発掘現場のように半分埋まった形で。ただそれは例えば魚や動物のような小さなものではない。どこの骨かもわからないが、寝転がったらこちらの身長と同じくらいの大きさはありそうだ。

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