ディープ・ケイブ・アドベンチャー! 09



9 トラップを突破しました▽



「スキャン終了うん、大丈夫そう! でも一応兄さんのタブレットで見てほしいな」

「りょ」

 イデア先輩のタブレットを全員で覗き込む。彼らの言っていた通りCGで立体的に再現された地図は途中で細くなることもなく、かなり奥深くまで続いている。

「これ……行き止まりか?」

「うん。でもこれ素材が違うし、天然でこんな真っ直ぐの行き止まりになるかな?」

「何かありそうだな……あ、海に繋がってそうな細い穴とかあるか?」

「無さそうですけど……どうしてですか?」

「満ち引きで帰り道水没したらやべえだろ」

「た、確かに……」

「一応潮位や満潮時刻も調べてみたけど関係なさそうだよ」

「壁の湿り具合も数時間前まで水に浸かってたってワケじゃなさそうだな」

「いざとなったら拙者の小型呼吸器もありますし、カヴュ氏も水中呼吸魔法マスターだし」

「そんなものまで作ったんですか先輩!?」

 むふー、と得意げな顔でピースサインをするイデア先輩。どうしよう、すごくワクワクしてきた! グリムも天井からタブレットを覗いて、いの一番に新しい道へ飛び込もうとしている。

「じゃあ俺先頭な。一応用心しとけ。グリムは俺が抱えて行く」

「なんでなんだゾ? せっかく天井も走れんのに……」

「棘とかあったらどうすんだ。海には毒のある生き物もいるぜ」

「絶対落とすなよカヴュ!」

 ジャックの冷静な指摘(グリムには脅しになってしまったようだ)により、ツナ缶を差し出された時と同じくらいの速さでカヴュ先輩の背中を駆け上がったグリムは彼の肩にしがみついている。

「人工物だなこりゃ……良いぞ、降りてきて」

「着いて来い子分ども!」

 階段のようになっている急な下り坂を降り切った先輩は、そうこちらに声をかけた。グリムの調子の良い声も聞こえるし、降りた途端に最悪の光景、なんてことはなさそうだ。

「よし行くぞ、行くぞ……!」

「お前は極力俺とデュースの近くを離れるなよ」

「わかった」

 今までとは違い一人ずつでないと進めない穴(高さは十分なので、ジャックでも腰を屈めることなく進んでいける)だが、気合を入れて降りていったデュースから一歩半だけ開けて進んでいく。

「今までとそんなに変わらない……けど確かに人の手が入ってる。さっきの下り坂も劣化してるけど階段だったっぽいし……帰って再分析してみるか……」

「うん! 全部記録してるけど特に気になるのがあったら言ってね、兄さん」

 そして最後にイデア先輩とオルトの二人。周囲を見回しながらそんなことを言うが……生憎自分には今までの洞窟と大差ないように見える。

「生臭いの、これか?」

 カヴュ先輩はしゃがんで、わずかな水溜まりを指差す。流石にここに降りてから、自分でもわかるくらいの生臭さが鼻をつく。

「これだゾ!」

 グリムは鼻を摘んだ声で言う。振り返ればジャックも顔を顰めているし、匂いの正体は水溜まりで間違いないようだ。

「イソギンチャクが死んでんだわ。水没してた時海と繋がってたんだろ。流石にここは生物避けの結界してなかったらしい」

 デュースと一緒に水溜まりを覗き込む。白濁した水の匂いに咳き込みそうになるのを押さえながら立ち上がった。水没していた時はイソギンチャクばっかりの洞窟だったんだろうか。ちょっと気持ち悪いかも。脳内は絵本みたいな色鮮やかなイメージに留めておく。

「ねえ、カヴュ・マンダラットさん。この海域って有毒のイソギンチャクは生息してるよね? どうも常夜の島近海はデータが不足してるみたいで」

「ああ……深くまで潜ればいるな」

「これ、罠だったりしないかな?」

「罠?」

 オルトの指摘に首を傾げる。

「あああ! そういうことか! うわー一気に期待度高まりますなこれ! この世の全てとか眠ってたりしそう!」

 一人声を荒げてハイテンションになるイデア先輩。この先に宝があるから罠が仕掛けられてた、ということだろうか?

「どういうことですか?」

「だからさ、ずっと水没してたんなら有毒のイソギンチャクが蔓延ってたんだよこの穴。どこかから偶然プラヌラ幼生が流れ着いて増えたんじゃなくて、わざと増やしてたってワケ! 魔法薬とか耐性があればなんとかなってもそうでもない奴にはひとたまりもないじゃん? で、海賊なんてならずものだから絶対に通れない!」

「そうか、呪いって」

「ジャック氏! そう、宝物を狙うと受ける呪いってのはイソギンチャクの毒って可能性! 無い!? 考察としては割と良い線いってると思うんですがいかがか諸兄!?」

 一息で説明したせいか肩で息をするイデア先輩に、おお、と声が漏れる。確かに先輩の仮説には筋が通っている。ところどころ人工物っぽくなっているのも説明がつくような。

「……具体的な呪いの症状までは伝わってねえからなんとも言えねえが……アリだなそれ」

「だよね! やっぱりお宝があるのかも!」

 オルトはいつもより十センチは高く浮いて喜んでいる。オルトは『お髭船長の冒険』が好きって言ってたし嬉しいだろうなあ。仮にお宝がなくたって良い冒険になる。こっちだってさっきからドキドキワクワクが止まらないし。

「よーし! みんな、お宝目指して行こう!」

 オルトの掛け声にみんなでおー! と片手を上げる。この道の先に何があるんだろう!

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