ディープ・ケイブ・アドベンチャー! 02



2 ドアを開けさせる方法

 

 そんなやりとりをしたのが数日前だったらしい。

「ヤダーッ! なんで他の人間も一緒なんですかーッ!」

「お前と俺でランデブーしたかったのはわかるが五人くらい連れて来いって言われててよ」

「そうだよ兄さん! 探検隊は多いほど楽しいよ! 監督生さんも一緒だよ!」

「俺がお前抜きでオルトくんとあーんなことダイビングこーんなこと浜辺で追いかけっことかして良いのか?」

「会話でルビ芸しないでいただけます!?」

 カヴュ先輩から「週末暇なら洞窟探検しようぜ、美味い魚料理も食べ放題」なんて誘われてグリムと一緒に頷いて、今日が出発当日の朝。誘ったはずのイデア先輩が部屋から出てこないとオルトに相談されて、寮長の部屋の前の廊下でドアを挟んでそんな会話をしている。

 自分とイデア先輩とオルトの他に、デュースとジャックも誘われている。鏡の間に準備万端で待っていた二人はなんだかとてもわくわくしていて、遠足当日の朝みたいな気分になったのだけれど……人間というかコミュニケーションが苦手なイデア先輩にはちょっと苦しいのかもしれない。豊作村に行く時も聖地巡礼! と息巻いたものの当日の朝ごねていたし。あの時はオルトが同行しなかったというのもあるだろうけど。

「元々マレちゃんとレオナちゃん誘ったんだけどよ」

「嘘だと言ってよカヴュ氏!」

 これに関してはイデア先輩と同じ感想だ。カヴュ先輩はなんというか、怖いもの知らずというか。不機嫌だったりわくわくしたりしてる二人が鏡の間にいなかったということは案の定断られてしまったようだ。まあカヴュ先輩は誰を誘っても仲良く楽しくやるだろうし、二人に断られたことも別に気にしていなさそうだけど。

「レオナちゃんは俺の代わりにこいつの方が鼻が効くってジャックを推薦してくれてよ。良い奴だぜ。洞窟探検って聞いてちょっと尻尾動いてたし」

 この会話を聞かれてたらジャックはかなり怒りそうだ。

「マレちゃんは話する前にセベクから門前払い食らってよ。週末は忙しいらしい。んで、どうするか悩んでたところにデュースちゃんよ。サメトリオから話聞いてたらしくてよ、監督生にも話繋げてくれたぜ」

 サメトリオ、と言うとオクタヴィネル寮一年のサメの人魚の三人だろうか。ホオジロザメの人魚のブルーノは同じクラスにいるし、デュースとも比較的仲が良い。元々やんちゃしてた同士気が合うとかなんとか言ってたっけ……そうか、あの三人はカヴュ先輩とも仲が良いんだった。

「ひ、比較的マシに思えますが拙者は動きませんぞ」

「これでも駄目かァ」

 もしかしなくともカヴュ先輩は随分失礼なことをやってるんじゃなかろうか。これでイデア先輩が動くなら良いのかもしれないけど。カヴュ先輩はしばし考える。オルトもどうしたら良いか計算してるみたいだけど、あまり良い案は出ない様子。彼らに比べたら付き合いの浅い自分が何かできるわけでもないし、と首を傾げていると、カヴュ先輩が咳払いを一つ。

「……砂のお城つくーろー♪ ドアを開けt」

「歌は権利問題洒落にならんて!」

「んなこと言うなら俺の存在もグレーゾーンだぞ」

「メタな話やめていただけます!?」

 思わずドアをばん! と開けて出てきたイデア先輩は、カヴュ先輩とそんなよくわからないことを言い合っている。多分二人にしか伝わらない空気感なんだろうな。

「兄さん!」

 その隙にオルトがイデア先輩の裾を掴んで追い打ちをかけている。オルトはいつものギアではなく、いかにも探検隊という感じの服(今回は布のパーツもある。オルトがイデア先輩に頼み込んで作ってもらったらしい)に、黒を基調とした流線型のフォルム。どんなに激しい海の中でもきちんと泳げる優れものなんだとか。更にいつもより遥かに高性能なカメラにソナーまでついている目の部分はパイロットゴーグル型。毎度のことながら、イデア先輩の技術力は凄まじい。

「お、オルトがいるから着いていくだけだし……不具合とかあったら困るし……」

 仕方ないなあ、と言いたげなイデア先輩だが、リュックサックはきっちりと準備してあるし首にはオルトのものと同じパイロットゴーグルをかけている。極め付けにちょっと嬉しそうにニコニコしてるのが隠しきれていない。

「じゃあ行くか!」

 オルトと一緒におー! と勢いよく拳を振り上げる。鏡の間で待っているグリムがデュースとジャックに迷惑をかけていなければいいのだけれど。

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