死ぬまで壊れずそこに在れ



 彼女の予想が的中しやがった、面倒だなと歯軋りをする。縁起でもねェことを言うんじゃねェよ。まあ本当になるとは彼女ですら思っていなかっただろうが。

「私はライブフロアにて侍対処に当たりましょうか」

「うわ」

 いきなり空から降ってきた彼女の声には驚かざるを得ない。確かに撤退先まで命令していなかったが、ここまで早く戻ってくるとは思うまい。

「それとも君の近くにいましょうか」

 こちらが言い淀んでいると、彼女はにんまりと機嫌の良い猫のように笑って言った。この期に及んでおれを揶揄うつもりかと思いつつ、それ以外に思いつくわけもない。ライブフロアは確実に乱戦状態、それでは彼女と相性が悪すぎる。それならばおれの横に置いておく方がマシか。開けた場所よりも狭い室内の方が彼女に分があることは確かだ。

「あ? お前その顔布」

「侵入者が多すぎますからね。メアリーズ臨時部隊です」

 彼女は一つ大きな目玉の描かれた顔布をしている。そうか、さっき姿を消している間にバオファンのところにでも行ったか。監視役のあいつらはこの大失態にてんてこ舞いだろう。丁度良いところに来たなと引き受けてきたに違いない。幹部の近くにいる奴が情報の授受ができるのはかなりやりやすいんだろう。

「侵入者の情報頼む」

「もちろん」

 いつになく上機嫌な彼女を横目に駆ける。この程度の動乱で負ける気はしないが、彼女については別問題。こっちの預かり知らぬところで死なれては困るのだ。できることなら五体満足でいてほしい。さんざ互いの"恋"に付き合わせて終着点がこんなでは彼女も浮かばれまい。

「隙があったらおれを殺すより逃げろよ」

 一つ懸念事項を口に出す。空気の読める奴だからそこまでしないとは思うが、万が一おれに隙ができるとしたらそれは確実に段違いの敵と遭遇した時だ。さっきの奴みたいなのがごろごろいるとは思えねェが。

「そんなに分別のない女じゃないです」

 どの口が言うんだか。まあ彼女のことだ、おれを殺すまでは魂だけになっても生きてそうだけどよ。

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