だから僕は、君のことを諦めた
「今年の金色神楽、何もなければ良いですけどね」
「ん? ああ、侍たちの動きが、ってやつか」
花の都の哨戒中。彼女はそんなことを口に出した。金色神楽は年に一度の宴。いつもは怯えた顔のワノ国の奴らも本土で祭りを行い乱痴気騒ぎをするのが常だ。最近は神楽当日は鬼ヶ島で過ごすのでここ数年の動きはわからないが多分そうだろう。これでも一応幹部なんだわこちとら。
「ちっと警戒しすぎな気はするがな」
「今年が予言の年なんでしたっけ、まあ気持ちはわかります」
「お前よく知ってんな……」
何が楽しいのか彼女はいろんなところに顔を出してはよく情報を仕入れてくる。今年は侍が多く捕縛されて人手不足とは聞いたがまさかそこにも手伝いに行ってるんじゃねェだろうな、コイツ。拷問とか正直得意そうだし。
「まあおれ達は鬼ヶ島だけどよ」
「私も一緒の部屋にいた方が良いですか」
「厨房でも手伝うのか」
「いえ、なんとなく」
顔を覗き込めばにんまりしている。ああこれはおれが一緒にいてくれと言うのを待ってるな。かといって言わなきゃ会話を堂々巡りさせて同じことを言わせようと画策してくるやつだ。
「どうせ梁の上にでも潜んでるつもりだろ。それなら一緒に……あ」
彼女のことだ、去年も厨房を手伝うと言っておきながらいつの間にか頭上に潜んでいた。猫のように。それをやるなら真正面から言うかなあなあで隣にいればいいのに、彼女のプライドは許さないらしい。いやおれのプライドは。
「問題でも?」
「……オッサンどもがいるなあと思ってよ」
「茶化されるのが嫌ですか」
ササキとフーズ・フー。こいつらは「恋人同伴か?」「キスしたか?」などと去年散々茶化してきやがった。まあそれで暴れる姉貴を止める方が一苦労なんだが、彼女以外に揶揄われるのが好きなマゾヒストではない。ドレークはまだ良い、こちらを憐れむような目で見てくるだけなので。
「お前は良いのかよ」
「別に構いませんよ。私とページワンくんの関係を知ってる人が多いというのは良いことです」
公然の関係いえーい、などと言いながら両手でピースサインをしている彼女。本当敵わねェよ。
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