特技:ジャンピング土下座



「いやもう、っふふ、本当に……っふは、ごめ、ごめんなさい……あっははは!」

 謝罪とは程遠い彼女の言葉に怒るでも呆然とするでもなくただただため息を吐いた。

「マジで二度と使うなよ」

「っもち、もちろんです。っふふ」

 端的に言えば、彼女がいつものように(こんなのが日常になってるなんて本当にごめん被りたいんだが)おれの料理に盛った毒を、彼女自身が食べただけ。いや端から端まで気遣いであることはわかる。わかるんだが、落ち込んでる相手にワライダケを食わそうとするな。無理やり笑わせるんじゃない。笑えば気分も晴れますヨー! などともっともらしいことを胡散臭く言っていたから信じかけたんだが、それで納得するわけがない。というかそれは姉貴に既にやられてえらい目に遭ったことがあるんだわこちとら。悲しくなってきたな畜生。で、そんならお前が食えよと彼女の口にもワライダケ(丁寧にバターソテーされていた)を突っ込んだのである。おれも食うことには食ったが恐竜になれば分解能も上がる。無効化させてもらったわけだ。いつもやられっぱなしだと思うなよ。

 というかまだ落ち込んでるように見えたのか、おれは。任務の失敗をそこまで引き摺るような小さい男ではない……というかそれを払拭できるくらいの活躍をどうやってするか考える方だし、ここ数日もその最中だったわけだ。まあ元々姉貴ほど考えていることが周囲に筒抜けになるタイプでもない、仕方ないっちゃ仕方ないんだが。

「まァいいや……」

「あっ待って、待ってください」

 今のこの状態の彼女に何を言っても無駄だと部屋を後にしようとするが彼女に引き止められる。

「あっはは。ふふ、すみませんでしたー!」

 彼女はいきなりその場でぴょこんと飛び上がり、ずざ、とダイナミックな音を立てて土下座して見せた。いや大丈夫か。ワライダケってこんな性格まで変わるもんだったか。彼女のことだし他のドラッグも混ぜてるんじゃねェだろうな。

「……わかった。謝りたいなら毒抜けてからな」

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