「はぁい特製サルサに豆ペーストも用意しましたよ
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」
いつにも増して猫撫で声の彼女。花の都でよくそれ用意したなと思いながら、気に食わねェことがあるとすれば彼女の態度だ。どこか余所余所しい、かつこちらを宥めるような声色。というか何の理由もなく彼女がおれの好物を用意するか? これでも年単位で彼女と付き合ってるんだわ。何かしらのサプライズをやって驚いている隙を狙うなんてのはもうやり尽くした戦法だ。というか昨日やった。失敗した作戦を二日連続で天丼するほど彼女もマンネリしていない。
「……ほっとけ」
ので、先手を打たせてもらう。先日おそばマスクなんてふざけた奴を取り逃したおれに対する哀れみとか慰めなんだろ、わかってんだよ。などと少々青過ぎる思考を巡らす。うるせ、こちとらまだ弱冠二十なんだわ。それくらい許されたい……無理か、無理だな。
「ページワンくんが任務失敗したから君の好物を用意して甘やかそうとしてるんですけど」
「全部言うな全部!」
「恋人の優しい優しい気遣いを無碍にするなんて酷いひと……」
「普通の女は恋人の命狙わねェんだが?」
こいつにはデリカシーというもんが存在しねェのか、いや気遣いは有り余ってはいるんだけどよ。ああクソ、考えれば考えるほど自分の未熟さが際立って仕方がない。大人になれってか。
「……毒は」
「隠し味程度に!」
「ハイハイ」
ため息を吐いて彼女の持ってきた料理に手を伸ばす。この際毒なんかどうでもいい。どうせおれが即死するレベルのもんなら彼女も料理してる時点で無事じゃない。
「お腹すいてると三倍増しで落ち込みますからねー。好きなだけ食べてください、リクエストも受け付けますよ」
「…………おう」
「あ、膝枕ぱふぱふコースも受付中です」
「おれのプライド考えたことある?」
そこまで行くと甘やかしじゃなくて煽りなんだよなァ! 嬉しいことは嬉しいんだが素直に応じれるわけが無ェ!