推しからの供給でオタクは死ぬんだよ/アオハル
「ぺーたんがメイド服じゃないー!」
「オールドスタイルがよかったのにー」
「頼むから落ち着、落ち着けって! っの馬鹿!」
何が悲しくて二人から脚に縋りつかれなきゃならねェ。というかこんな狭い廊下でそんな駄々っ子でも今時やらないことをするな。見てみろ周囲を。見事に避けられてるぞおれたち。ええいスマホを向けるな。修羅場でも何でもねェんだよ。片方は姉貴だっての。
「文化祭といえばメイド服じゃないですか! 常識的に考えてー!」
「んな常識捨てちまえよ!」
そう、今日は文化祭。おれのクラスの出し物は彼女たちの望むメイド喫茶……ではなくおばけ屋敷。おれはその宣伝のため看板を掲げ構内を練り歩いていた最中であった。というか仮にメイド喫茶をやったとしておれがメイド服を着るわけがねェだろ。男のメイド服に何の需要があるって話だ。
「こぉんなにかわいいぺーたんに何の衣装も着せねェとかクラスの奴ら目が節穴だな!? 潰してくるでござんす!」
「やめろやめろ満場一致だったんだからよォ!」
もうこの際姉のおかしな語尾に関しては突っ込まないことにする。まずは離れろよお前ら。おれが実力行使に出られないからって好き勝手やりやがって。いや姉貴に限ってはおれより強いが! 悔しいことに!
「……ページワンくんは何の役するんですか」
「あ? 受付」
「面白くねェなァ!」
離れろと目で語っていたのを理解してくれたらしく、彼女は素直に立ち上がって言う。姉貴はそのままだが。
「仕方ねェだろ……ってかお前らのクラスは何やってんだよ」
「うるティさんのところと合同でメイド喫茶ですけど……」
「はァ!?」
声を張り上げたくもなろう。まじまじと彼女の姿を見るが普段の制服と全く同じ。ホワイトブリムすら着けていない。
「私は調理担当なので」
「面白くねェ! って今言おうとしただろぺーたん」
「はっ、いや全然そんなことねェが」
畜生、ほんの僅かにだが彼女らの気持ちが理解でき……いや待て、やっぱり男のメイド服はおかしいだろ!
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