サヨナキドリの首を絞め



「うるせェな……」

 鬱蒼とした森の中。鳥の鳴き声ばかりが響いている。カイドウさんの命令じゃなきゃこんなとこ絶対に来ない。生憎おれにはハイキングを楽しむ趣味も、鳥の鳴き声を判別する知識もない。足音なり銃声なり聞きたい音は沢山あるのに、鳴き声のせいで注意が削がれて仕方がない。敵がいたところで同じ条件なのは良いことだが。

「焼いて食べます?」

「弾の無駄だろ」

 担いでいた猟銃を軽く構えて見せる彼女。しかしそこまで大きい鳥でもないし、この森の中に何羽いると思ってる。一発空砲でも撃てば静かになるかもしれんが、敵に捕捉された時が厄介だ。

「何て鳥だ」

「ナイチンゲールですかねー」

「マジで知ってたんか」

 彼女なら知ってそうだなと気を紛らわすために聞いたのだが、ここまで即答で返ってくるとは思わなかった。彼女が嘘をついている可能性も捨てきれないが、どちらにせよ確かめようがないので黙っておく。

「一羽だと綺麗なんですけどね、これだけいるとまあ煩いことこの上ない」

「全くだ」

 石でも投げて撃ち落としてやろうかと思ったが、そんな狙撃スキルがあるわけでもなく。我慢して進むしかないか、と諦めた矢先、ひゅっ、と背後で風を切る音がした。

「お、ナイスエイム」

「そういうのはやる前に言え……」

 彼女はボウガンを構えていた。背後から矢を放ち前方の木の枝に止まっていた鳥を射止めたらしい。っていうかいつの間にんなもん装備してたんだか。柔らかな落ち葉の上に転がった獲物を拾い上げる。

「墓場鳥って言うんですよ。穏やかな死をもたらすとかなんとか」

「良かったのか?」

 彼女もおれも言い伝えやら迷信を信じる方でもないが、割と縁起の良いものを殺してよかったんだろうかという気にならなくもない。特に彼女に関しては。

「ええ。だって"穏やかな"死なんて退屈じゃないですか」

「ヒヒ、それもそうか」

 にやりとする彼女に笑い返した。

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