囚われのお姫様が性に合わないものでして
手錠と首輪がガチャリと重々しい音を立てる。思っていたよりも付け心地は良くないな、と当然のことを考えながら自分の番号が呼ばれるのを待っている。ここはヒューマンショップ、オークション会場の舞台袖。早い話、私は奴隷になりかけているのだった。
「そろそろですかねえ」
あくまで表向きではある。自分から望んで売られるわけがない。潜入調査というやつだ。カイドウさんのナワバリの島から人を攫って奴隷として売り飛ばした輩がいるらしいという情報を受け、幹部であるページワンくんに白羽の矢が立ったのだ。海賊というのはおおらかなようで執着が強いもの。普段は気にしていない島であろうともそんな報告を受ければ地の果てまでも追い詰めてやろうと思うらしい。
ひとまず事実と首謀者を確認しなければならないので、私が潜入した。ヒューマンショップの奥に入り込んでわざとヘマをする。人身売買リストを懐に収めてページワンくんに連絡してから、金庫を乱暴に破壊した。そうすればリストの紛失なんかすぐに気が付かないし。そういうわけで、私はあと少しで奴隷にされそうなのだ。多分もうすぐ彼が来るだろうけど。
どんがらがっしゃん、なんてありきたりな音が響く。彼のカチコミらしい、と客席を覗き込んだ。ページワンくんの戦闘を真正面から見ることもなかなか無いのでもう少し眺めていたいのだけど、と後ろ髪引かれながら慌てふためく会場内を駆けていく。自分の首輪を外す鍵が壊れたりなくなったりしたら大変だし、ついでに可能な限り他の人も助ける作戦だったし。
「やっぱ仕事早いなぁ」
鍵束を持って戻れば既に会場の殲滅が終わっている。ちなみに元締めたちは真打ちを含むギフターズが既に確保してしまったようである。一件落着、というやつだ。
「楽しかったですかー?」
「んなわけあるか」
大声で呼び掛ければ、彼は息切れ一つせずそう返した。ううむ、オークションで恋人を競り落としたり恋人を助けるべくオークション会場をめちゃくちゃにするのは男のロマンだって聞いてたんだけどなあ。
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