拝啓から始まる宣戦布告/アオハル



 彼女から手紙を貰った。SNS上のメッセージや動画、ましてメールでもなく、このご時世に手紙である。まるで絵に描いたようなテンプレートな封筒。これを押し付けて彼女はさっさと自分の家の方面へ帰ってしまった。何これ。路上で一人、両手で手紙を持って呆然と立っている。どうしろってんだこれ。ずり落ちたバッグを肩にかけ直し、ひとまず帰路に着く。確か姉貴は帰りが遅い。姉貴に見つかる前に読んでしまうべきだ、絶対に。というかこれ何が書いてあるんだ。ラブレターなんてひと昔どころか太古の時代の話だろ。そもそもラブレターなんか書く必要あるか? おれたち付き合ってんのに? 

 

「なんで緊張してんだおれ……」

 で。制服も着替えないまま部屋のドアを背にして座り込む。ただの紙切れだろ、こんなもん。そっとハサミでそっと上部だけに切り込みを入れて便箋を取り出した。

『拝啓、ページワン様』

 むず痒い。なんだこの改まった書き方は。現代文欠点のくせにどうして手紙の書き方だけはキッチリしてんだよ。

『同じ学校に通っているので時候の挨拶は省略します。

 口で伝えにくいこと、証拠を残しておくべきことは文字で記すべきでありますから、こうやって手紙を書かせていただきました。ちょうど可愛い手紙セットを知り合いに貰いましたので』

 口で伝えにくいことって何だ。まさか別れ話か。心臓が嫌に拍動している。そこまで彼女に執着していたつもりもないが、こうも唐突に出されるとなると話が変わってくる。だってそんな感じなかっただろ。今まで通りだっただろ。ってか何が拙かったんだ……いや待てまだ別れ話と決まったワケじゃねェ。こっちを揶揄うのが大好きな彼女だ。きっとどうでも良い内容に決まってる。

『端的に申し上げますと、この手紙は果し状であります。』

「は?」

 こんなの声が出るだろ。彼女に貰った手紙が果し状なんて状況あるか? 今だよ畜生。

『来週の日曜日、駅前のビュッフェにて。大食い対決を申し込みたく思います。』

「…………いやデートの誘いならそう言えや!」

 また彼女に揶揄われている。今回もおれの負けだよったく!

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