この関係に名前をつけるな



「ドレークさん、こんなところに何の用ですか」

「ッお前は、ページワンの」

 鬼ヶ島武器庫入り口。決して幹部の立ち入る場所ではない。彼はまだここに入って比較的日が浅く、ゆえに任務もワノ国本土のことが多い。迷ってしまったのだろうかと声をかけたが、驚かせてしまったようだ。彼と私の背丈を考えると、こちらはちょうど死角になりやすいんだろう。

「遊郭ならこの通路をまっすぐ。ライブフロアは元来た道の途中にある階段を下ってください。あ、食事どころなら今から行くのでご案内しますが」

「ああいや。あまりこの島には来ないのでな。武器類の貯蔵を見ておこうかと思っただけだ」

「なるほど。元々海兵さんでしたものね、気になりますか、やっぱり」

「ああ。これだけ戦闘員のいる集団だ。武器なんかいくらあっても足りないのではないか」

 存外話のできる人だ。茶化しもしないし、この海賊団では珍しい。かなり真面目な人だ。普通そこまで気にしない。彼らはその体一つで戦えば良い。下っ端まで気をかける必要がない。

「ここは予備の予備ですけどね。武器は本土で作ってますし……一応減った分は都度報告してますが、むしろ過剰なくらいです」

 そうか、と彼は頷いた。興味があるらしい。

「良ければ詳しく解説しましょうか? 結構いろんなところに首を突っ込んでいるので食料から人間の移動まで大体ならお話しできますが」

「……良いのか?」

 けれど彼は申し訳なさそうに言う。何か問題でもあるのだろうか。一応彼はこの海賊団の幹部。知ってはいけない情報なんて無いはずだ。

「……お前はページワンの恋人じゃないのか」

「何か問題でも?」

「いや……問題ないなら良いんだが」

 首を捻って彼の遠慮について考える。ああそうか。こんな人気のないところで恋人のいる女性と二人きりになることを危惧しているのか。本当に真面目な人だ。

「恋人と言っても。隙あらば殺したい仲なので。もし彼が何か言ってくるようなら釘を刺しておきますが」

「い、いや……ああ、武器について教えてくれるか」

「そうでしたね」

 少し引き攣った彼の顔に、再度首を傾げる。私たちの関係は恋人なんて言葉には収まらないので。

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