戦場でダンスを



「取り零しを頼む」

「はい」

 素直に頷いた彼女はとっ、と軽やかに後ろへ跳んだ。今日持っているのは小型拳銃とサーベル、銃剣あたりか。どういう育ち方したらカタギの癖にそんな武器を使いこなせるんだか。持って生まれたセンスがいいのか。彼女がおれのように元々海賊として育っていたらかなりの腕になってただろうな。まあ器用貧乏なきらいがあるのは事実だが。

「危なくなったら言え、殺しに来るなよ」

「そんな余裕ありませんよ」

 軽口でも叩くかと思ったが、案外真面目だな。まあこんな大きめの戦闘は初めてだから緊張でもしてるんだろうか。片手間に獣態へ変身し、雑兵を一掃する。露払いも大事だとはわかるが……できれば強い奴と闘いたい。若いと言えどおれも幹部だし、暴れたい盛りだ。今回は姉貴が突っ込んでいったからなんとか呑み込むほかなかった。

 ちらりと背後を見る。おれが倒し損ねた奴を彼女が的確にノしている。全く、綺麗な戦いぶりだよ。少々足元が狂いかけることはあるものの、まるで踊るような軽やかさじゃねェか。弾切れを意識してか敵の落とした武器まで使ってやがる。本当に器用だなお前。もし海軍にでも入ってたら恐ろしかっただろう。ヒヒ、おれも随分な奴に命を狙われてしまったもんだ。

 本当なら彼女を戦場に連れ出すつもりはなかった。無かったんだが、彼女はおれの部下である。上が出て部下が出ないわけにもいかない。それに他のギフターズあたりから不平を言われても面倒だ。そもそも彼女が言うことを聞かなかったというか……おれが何かしらの闘いに出るとわかればすぐに着いてこようとする女だ。そんなにおれの弱点探しがしたいのか。それとも普段と違うおれを見ようとしてるのか。戦闘直後に襲われちゃザマァねェな、気をつけとくか。

「ページワンくん!」

「あ?」

「適度に、負傷してくださいね」

 ピンチにでもなったかと急いで振り返ればそんなことを言う始末である。ハートマークまで付けてそうな甘ったるい声で。本当にお前覚えてろよ。

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