言葉のキャッチボール、という言葉がある。円満な会話を成り立たせるためには、一方だけが喋ったり素っ頓狂な返しをしたりしてはいけない、というやつだ。いくら大海賊時代、無法者たちの闊歩する時代であってもそれは欠かせないことだ、多分。
「ぺーたん! 姉はクレープが食べたいんだみょん!」
「その変な言葉遣いやめろ。つかあと三時間もすりゃ寄港だろそれまで待てッうお、」
つまり何が言いたいかというと、ページワンくんの姉であるうるティさんのことである。彼女は脈絡がない。弟のページワンくんを大事にしていることはよくわかるけれど、かなり肉体言語的で無茶苦茶。前述の言葉のキャッチボールなんて全くできちゃいない。表現するなら砲丸投げが良いところだろう。何の繋がりもない言葉を次々投げつけて、それを拾うこともしない。
「やだー! ぺーたんと一緒に作りたいみょん!」
「やめろ姉、っう」
ページワンくんはヘッドロックされている。まあいつものことだし、比較的若手といえど幹部のじゃれあいに入れるほど強くはない。そんな日常を眺めながら思う。私に足りないのはこれなのではなかろうか。
私とページワンくんは付き合っている。一日一度の殺人未遂という私の恋と、世間一般的恋愛を求める彼の恋。それらを良い塩梅でミキサーにかけた結果ではあるが。それなりに彼を楽しませている自信はあるけれど、もしかしてマンネリ化してないかと思ったりもする。きちんとした好意の上で殺意を抱いているので彼に好かれないのは恐ろしい。で、悩んだ結果がこれだ。うるティさんというミサイルばりの面白い人が身近にいたら私なんか霞んでしまう。今やっと思い当たった。まずは彼女のことを観察して
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「お前はそのままでいい! 姉貴みてェにはなるな!」
「お姉ちゃんと呼べー!」
お得意の見聞色で邪な画策を見透かされてしまったらしい。なるほど。彼が言うなら私はこのままでいこう。腕ひしぎをきめられているページワンくんを見ながら笑顔が漏れた。